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投資啓蒙

個人投資家の中長期投資に必要な視点 ~ポートフォリオの分散~

2024年1月の新NISA開始以降、資産運用への関心がさらに高まり、「何から投資を始めたらよいのか」、「投資はしているが、次に何に投資したら良いのか」と悩む個人投資家も多いのではないでしょうか。2024年8月5日、日経平均株価は過去最大の下落幅を記録しました。将来起こりうる経済イベントを予測することは誰にとっても難しく、特に老後資金や子供の教育資金などが目的の、5年、10年にわたる中長期の運用を考える際には、こうした予測できない経済イベントに備えるという視点も必要です。

PIMCOはこれまで世界の数多くの機関投資家の運用をサポートしてきましたが、不測の経済イベントに備えて彼らが実践しているのがポートフォリオの分散です。投資のタイミングや、資産を分散したポートフォリオの構築は、個人投資家にとっても重要といえるでしょう。

債券が、株式のポートフォリオにもたらす効果

株式を保有している投資家が分散先として考える代表的な資産の一つが、債券です。債券は、株式とは異なる値動きをする傾向があります。景気後退時には株式に比べ、債券の方が底堅いパフォーマンスを示す傾向があることから、債券と株式を合わせ持つことで、経済イベントが起きた際にもポートフォリオ全体の値下がりリスクを抑制することができ、長期的に安定したリターンが期待できます。これを分散効果といいます。世界でインフレが落ち着きを見せるにつれ、株式と債券の逆相関(値動きが逆に動くこと)関係が復活していることからも、債券投資による分散効果が一層期待できます。

また、株式と債券はリターン構造が異なります。一般的に株式投資のリターンの大半は、株価の変動に伴うキャピタルゲイン(価格収入)が占める一方、債券投資のリターンの大半は利子として定期的に支払われるインカムゲイン(利子収入)が占めています。インカムゲインは発行体である国や企業などがデフォルト(債務不履行)に陥らない限り得ることができるため、着実に積み上がるインカムゲインがリターンの土台となる債券は、中長期で見ると株式に比べ景気や市場のアップダウンの影響を受けづらくなります。

株式と債券のリターン構造の違い(米国の例)

株式と債券のリターン構造の違い(米国の例)
期間:2000年12月末~2024年9月末(月次) 米国株式:S&P 500種指数、米国債券:ブルームバーグ米国総合債券指数 出所:ブルームバーグのデータを基にPIMCO作成。上記は、過去の指数の動きとその分析であり、将来の市場環境の変動や運用成果を示唆または保証するものではありません。

アクティブ運用ファンドを活用した債券投資

近年、債券は様々な発行体や発行様式の高度化に伴い、多種多様な債券銘柄が存在しています。どの債券銘柄がよいのか悩む個人投資家には、投資信託(ファンド)を活用する方法があります。投資信託は投資のプロであるファンドマネジャーが投資対象となる資産を調査、分析、選別して投資・運用しており、個人投資家にとっては少額資金から投資が可能であることからも投資を始めやすい金融商品です。また、一つの投資信託でも様々な銘柄に投資するため、分散効果が期待できます。

投資信託には大きく分けて、インデックス(指数)で表される市場と同様の値動きを目指す「パッシブ運用」と、運用者の投資判断によって市場を代表するインデックスを上回るリターンを狙う「アクティブ運用」の2種類があります。過去10年間の運用実績を比較してみると、債券ファンドにおいてはアクティブ運用がパッシブ運用を上回るパフォーマンスを示しています。

米国の株式ファンドと債券ファンドの超過収益:アクティブ運用とパッシブ運用の比較(過去10年)

米国の株式ファンドと債券ファンドの超過収益:アクティブ運用とパッシブ運用の比較(過去10年)
期間: 2014年9月末~2024年9月末時点。報酬等控除後月次パフォーマンスの中央値。出所:米国モーニングスター社、ブルームバーグ。パッシブ運用/アクティブ運用の分類は、米国モーニングスター社によるカテゴリーに準拠。超過収益はベンチマークに対する超過収益。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。*1

この理由の一つには、債券投資の構造的な要因が挙げられます。取引所で取引される公開株式とは異なり、債券では買い手と売り手が個別に価格や数量を交渉して取引する「相対取引」が基本であり、投資家によって取引価格が異なります。つまり、交渉力を有する投資家はより魅力的な条件で債券を売買することが可能となります。このような取引の特徴を持つ債券では、市場の動きとの連動を目指すパッシブ運用より、魅力的な銘柄を選別して投資するアクティブ運用に、より運用実績の向上が期待できます。

株式と債券の取引方法の違い
取引規模が大きい債券投資家は交渉力が高く、より有利な価格で債券を売買することができます。
取引規模が大きい債券投資家は交渉力が高く、より有利な価格で債券を売買することができます。
上記はイメージ図です。出所:PIMCO作成

債券アクティブ運用に生かされるPIMCOの強み

債券取引の交渉力となる重要な要素の一つが運用残高です。PIMCOの運用残高は日本政府の一般会計予算(約112兆円、2024年度)の2.5倍以上、約287兆円(約2.0兆ドル)*2で、債券のアクティブ運用会社としては世界最大級の規模です。PIMCOは、こうした巨額の運用残高により、債券アクティブ運用に優位な取引条件を引き出すことが可能です。

交渉力を表す好例が、「逆発行依頼」です。通常の債券発行では、クーポン(利率)や年限などの条件は発行者が決め、投資家はその条件で債券を購入しますが、PIMCOは取引規模が大きい投資家として、国や企業に対して自ら債券の発行を提案することも可能です。これが「逆発行依頼」です。その際、発行された債券の大半を引き取るなどの条件で交渉し、より有利な条件で投資することができます。

債券のリターンは経済や金利の動向に大きく影響を受けるため、債券の運用には経済見通しの精度の高さが重要です。PIMCOは独自の経済見通しを年4回策定してレポートとして発行していますが、同レポートは2008年のサブプライムローン問題を契機とした世界金融危機のリスクについても市場に先駆けて予見し、世界に警鐘を鳴らしました。また、世界金融危機後には、過去と比べて世界経済の成長率が低下し、かつその状態が長く続くことを予測し、ニューノーマルという言葉を生み出しました

Reading the Road Ahead: Behind the Scenes at PIMCO’s Economic Forums
経済予測会議(フォーラム)を開催し、独自の経済見通しを策定

綿密な発行体のリサーチもPIMCOの強みの一つです。世界各国の拠点を活用して発行体と年5,000回以上直接ミーティングを行っており、2万以上の発行体に独自の格付けを付与しています。また、独自のリスク管理システムを構築し、市場平均と比較して低いデフォルト率を実現しています。

こうした質の高い経済見通しや発行体のリサーチ力が、投資機会の発掘とリスク管理の両面に生かされ、運用実績の差別化につながっています。

債券投資の意義

PIMCOが考える「債券投資の意義」 個人投資家が 中長期の資産運用において安定したパフォーマンスを維持するには、投資のタイミングや、資産を分散したポートフォリオの構築が重要です。
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