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経済・市場コメント

現金から債券へ:パンデミック後の投資における戦略的転換

現金利回りが低下するにつれ、債券投資の魅力が説得力を増しています。

パンデミック後の市場や経済の混乱が収まるにつれ、長期的なトレンドが再び顕在化しています。1月にブルームバーグ米国総合指数の一般的な利回り指標が、1年以上ぶりに米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利(FF金利)を上回り、これは、市場が過去の傾向に回帰しつつあることを示す重要なシグナルの一つだといえます。

これほど長期間にわたって、ベンチマークとなる債券利回りがFF金利を(時に大幅に)下回る状況がいかに異常であったかは、いくら強調してもし過ぎることはありません。この状況は今世紀、パンデミック以前では4回しか起こっていません。しかも、数週間以上続いた例はありませんでした(図表1を参照)。

図表1:再びFRBの政策金利を上回る、ベンチマークとなる債券指数の利回り

出所:米連邦準備制度理事会(FRB)およびブルームバーグ、2024年11月29日現在。表示されているデータは、ブルームバーグ米国総合指数の最低利回り(LBUSYW)と実効FF金利(EFFR)。

通常の市場トレンドがこのように長期にわたって反転した背景には、FRBの引き締め政策だけでなく、極端なインフレ急騰やその他のパンデミックの影響に対する投資家の反応があります。多くの投資家は、数十年ぶりの利回りをもたらし安全と目される現金に退避し、滞留しました。

状況の変化

それから2年が経ち、市場の状況は様変わりしています。FRBが利下げに乗り出した現在、現金への過剰配分は再投資リスクを生み出します。資産が急速かつ繰り返し低利回りで回転していくためです。

時を同じくして、債券利回りがパンデミック期の低水準から大幅に上昇する状況も目の当たりにしました。金利の低下に伴って利回りが低下する現金と比べて、債券はより魅力的な投資機会を提供します。同じコア債券指数の利回りを、現金の一般的な代理指標である3ヵ月物米財務省証券の利回りと比較した場合を考えてみましょう(図表2を参照)。過去2年間、現金と債券はどちらも魅力的な利回りを提供してきましたが、現金投資家は、その性質上、これらの利回りを長期間固定することはできません。FRBが政策金利を0.5%引き下げた9月以降、コア債券に対する現金利回りの見通しは急激に低下しています。

図表2:現金等価物を上回る、米国のコア債券の利回り

出所:ブルームバーグのデータ、2024年12月6日現在。債券利回りは、ブルームバーグ米国総合指数の最低利回り(LBUSYW)、現金利回りは、3ヵ月物米財務省証券(Tビル)の利回りを使用しています。

FRBの軌道は予見された結論ではなく、実際、12月の会合後に当局の金利予想は上方修正される可能性もあります。ただ、これまでのデータやコミュニケーションでは、最も蓋然性が高いシナリオとして徐々に金利を引き下げることが示唆されています。FRBは、労働市場が健全でインフレ率が目標水準近辺にある、米経済のソフトランディングを確実にしようとしています。貿易政策、地政学、価格ショックなどの予想される障害、予想外の障害にかかわらず、目標を追求できる柔軟性を備えています。このような金利環境は、債券にとって非常に有利です。

長期的視点で見た債券

現在の相対的なバリュエーションと市場環境を念頭に、信用力と流動性の高いパブリック債券市場に大きな投資価値があると考えています。投資開始時の利回りは、様々なリスクと流動性の特性を有する、現金を含む他の資産と比べて魅力的です。歴史的に見ても、開始時の利回りは長期の債券パフォーマンスの強力な指標となってきました。

また債券は、基本シナリオ以外の様々なシナリオを乗り切るのに適したポジションにあります。歴史的に見ても、質の高い債券はソフトランディング時には好調に推移し、仮に景気が後退した場合には、さらに好調な展開となる傾向があります。雪の結晶と同じで、2つとして同じ金融サイクルはありませんが、債券は歴史的に様々な利下げシナリオで、良好なパフォーマンスを発揮してきました(図表3を参照)。FRBが非常に緩やかな(「より長期間、高レベルの金利」の)アプローチを取った場合も、大胆な引き下げを開始した場合も、あるいはそれら両極端の間の利下げ軌道を取った場合も、それぞれ過去の金利環境において、債券はその後、現金を上回る利回りを記録しています。

図表3:FRBの利下げ開始後、その軌道に関係なく、現金を上回る債券の利回り

出所:ブルームバーグのデータおよびPIMCOの計算、2024年9月30日現在。説明のみを目的としています。数字はPIMCOの商品あるいは戦略の過去または将来の運用成果を示すものではありません。記載された結果の達成を保証するものではありません。

1利上げサイクルとは、FRBがFF金利の誘導目標の水準やレンジを継続的に引き上げる期間と定義されます。利上げサイクルの終了は、FRBが政策金利の誘導目標の水準やレンジをそのサイクルのピークに引き上げた月(つまり、利上げを停止または利下げした月)と定義しています。利上げサイクルには以下が含まれます(開始からピーク):1984年(1983年2月~1984年8月)。1995年(1994年1月~1995年2月)。2006年(2004年5月~2006年6月)。各サイクルで金利がピークの水準に達した後のFF金利の軌道が全く異なる結果となった3つの事例を選びました。1984年のサイクルでは、現在と比較して開始時の利回りが大幅に高い場合の変化率に基づいています。

2向こう3年間のパフォーマンスを試算するため、各サイクルで向こう3年間、長期物の金利が過去のパターンを踏襲すると仮定しました。コア債券は、ブルームバーグ米国総合指数を使用しています。3ヵ月物米財務省証券(Tビル)のリターンは、現在の水準から始まるFF金利の月次変化を使用して推定しています。本資料に含まれる分析では、PIMCOは理論上イールドカーブに影響を与えるであろうイベントのシナリオを想定して説明しています。これらのシナリオが実現する可能性が高い、またはポートフォリオにおいて記載されている利益、損失、もしくは同様の成果が実現する可能性が高いことを表明するものではありません。シナリオは考えられるすべての結果を表すものではなく、分析ではリスクのあらゆる側面が考慮されているわけではありません。トータル・リターンは、パー・クーポンの債券からなるポートフォリオを想定し、キーレート・デュレ―ションを変えて推定しています。すべてのシナリオで、オプション調整後スプレッド(OAS)は一定です。

リスクのヘッジと分散

債券市場は、事実上、投資家にとってのリスクをヘッジし、分散する役割を果たしています。株式市場は歴史的に、利下げサイクルではもっと変化に富み、実際、時間の経過とともにボラティリティが高まる傾向があります。現在、世界の主要国でリーダーが交代し、地政学的な不安が高まっている時期です。

債券と株式は、パンデミック後のインフレショック期には連動した動きを見せましたが、現在は負の相関関係にあります。債券と株式の負の相関関係は、ポートフォリオを安定させるアンカーとしての債券の役割を強めています。

過去のトレンドも、債券が魅力的なリスクヘッジ手段であることの裏付けとなっています。1973年以降の債券市場と株式市場の平均を振り返ると、米国のコア債券の利回りが約5%以上で、現在のように米国株の株価収益率が30倍を超えている期間中、債券はその後の5年間のリターンが株式を上回り(図表4を参照)、ボラティリティも低くなる傾向が見られました。

図表4:歴史的に、現在のバリュエーションの株式を上回る、現在の債券利回り水準

出所:ブルームバーグのデータおよびPIMCOの計算、2024年9月30日現在。説明のみを目的としたものです。図は1973年1月からのデータを使用しています。コアとは、ブルームバーグ米国総合指数を指します。CAPEとは、S&P500の景気循環調整後の株価収益率を指します。本資料内で説明された傾向が継続する保証はありません。金融市場の動向に関する記述は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。

債券への投資は、魅力的な利回りを提供し、価格上昇の可能性が期待できるとともに、株式やその他のボラティリティの高い資産が減価していくリスクへの流動性ヘッジにもなります。

主な結論

市場が示すシグナルとFRBの動きは、債券利回りが転換点を迎えたことを表しています。高い投資開始時の利回りと、予想される金利低下により、幅広く債券の見通しは魅力的です。現金に投資し続けている投資家は、債券への投資を検討しても良いかもしれません。

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