PIMCO サステナブル投資レポート2023の主なポイント
サステナブル投資を取り巻く環境は、今後の投資に影響を及ぼす世界的な規制の動向、気候変動リスクなどの主要トレンド、未開拓市場への資本流入の促進といったいくつかの長期的な要因によって変化しつつあります。また、自然と生物多様性、気候の物理的リスク、手頃な価格の住宅といった新たなテーマが説得力のある形で収斂されつつあります。こうした変化を背景に、テーマ型債券、トランジション・ファイナンス、プライベート・クレジット戦略など、着実な投資機会が生まれており、長期的に現われる様々な可能性にPIMCOは非常に期待しています。
PIMCOは今年、堅固なプラットフォームの拡充、分析力の強化、独自のフレームワークの多様化に注力しています。幅広い投資プラットフォームと同様に、サステナブル投資におけるPIMCOの取り組みも従来の債券の分野にとどまらず、プライベート・クレジット、ストラクチャード商品、不動産などのオルタナティブ資産クラスに及んでいます。さらに、追加的な炭素分析、炭素の属性、予測ツールなど、気候変動リスクと生物多様性の詳細な分析を強化しています。
これらは全てお客様を念頭においた取り組みで、PIMCOは、お客様の投資目標の追求と、積極的な対話を通じて投資目標達成に向けた優れたソリューション導入の支援に取り組んでいます。
PIMCOの「サステナブル投資レポート」では、市場の推進力やトレンドに関する最新の考え方、積極的な対話に関する詳細なケーススタディと共に、こうした取り組みの進展についての示唆を詳しくお伝えしています。本稿では、本レポートの要点をいくつかご紹介します。
環境・気候調査
2023年は、低炭素経済への移行において進歩と課題の両面が浮き彫りになりました。たとえば洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギー分野は、初期のバリュエーションの高さ、実行上の問題、サプライチェーンの混乱、金利上昇に伴う資金調達コストの増加といった問題に直面しました。こうした困難にもかかわらず、国際的・地域的な政策の進展に支えられ、グリーンテクノロジ―や気候投資に対する一般的なコミットメントは引き続き強固です。
気候変動対策の移行は地域ごとに異なるペースで進められており、発行体や投資家にとっても万能な気候変動移行計画の解釈や実施方法があるわけではありません。だからこそPIMCOでは、気候変動リスクを評価・管理し、気候変動インパクトのポートフォリオを計測・最適化する能力を強化・拡充する方法をたえず模索しています。例えば、スコープ3に該当するサプライチェーン上流・下流の炭素排出量、ソブリン債や証券化商品など企業以外のカーボンレポーティング、気候変動対策などのテーマについて研究を深めています。目指しているのは、PIMCOのフレームワークとツールに、市場の動向やお客様のニーズを確実に反映させることです。2023年には多くの資産保有者が、ポートフォリオの気候目標の設定から、ポートフォリオレベルでの実行へと、焦点を大きくシフトさせました。
PIMCOでは、移行リスクと脱炭素化目標を分析するために、独自のポートフォリオ炭素予測ツールを開発しました。このツールでは、特に債券に関係するさまざまなシナリオに基づいて、ポートフォリオに係る将来の炭素排出量を推計します。その際、再投資や発行体のコミットメント、過去の排出量などの要因を考慮します。例えば、満期を迎えた証券の再投資は、ポートフォリオの脱炭素化率に大きな影響を与える可能性があり、適切な対処により、ポートフォリオの炭素目標を進める機会を生み出す可能性があります。
ストラクチャード・クレジットと不動産の統合
PIMCOはさまざまな市場での規模と経験により、サステナブル投資に関する戦略的な取り組みにおいて重要な役割を果たすことができると確信しています。それは企業体にとどまらず、ストラクチャード・クレジット、ソブリン債、地方債、適用が可能なオルタナティブ投資に及びます。こうした多面的な取り組みが、PIMCOならではの市場に対する独自の視点を生み出しています。
証券化商品は、債券市場において重要であり、発行済み証券残高全体の約25%を占めています。こうした投資商品は、お客様のサステナビリティへの取り組みを支援するうえで不可欠だとPIMCOは考えます。証券化商品には商品特有の長所と短所がありますが、資産クラス内の多様性により、お客様は環境に配慮し、社会的に有益な投資機会を追求することが可能です。
昨年、PIMCOでは、複数の資産クラスやテーマにまたがる独自のフレームワークの開発を継続しました。環境・社会・ガバナンス(ESG)スコアリングの対象範囲を拡大し、自動車ローン資産担保証券(ABS)、ローン担保証券(CLO)、カバードボンドや、ソブリン債、国際機関債、エージェンシー債 (SSA)などの証券化商品の分析を強化しています。
また2023年は、不動産プラットフォームの構築を継続しました。PIMCOは、商業施設、住宅、インフラなど、さまざまな実物資産に投資しています。PIMCOのオルタナティブ・アプローチを支える包括的なマテリアリティ(重要性)・フレームワークに加え、実物資産への投資から生じる重大なリスクを評価するための具体的かつ独自のツールを開発しました。このフレームワークには、物理的リスク、移行期の気候変動リスク、エネルギーの使用量と効率、入手しやすさとアクセスに関する専門的な調査と分析が含まれます。
ラベル付き債券とサステナブル投資における債券の役割
2022年、2023年とESGラベル債の絶対発行額は減少したにもかかわらず、社債インデックスに占めるESGラベル債の割合は増え続けています。この一因はインデックスから外れる従来型債券の割合が高いことです。PIMCOは、債券に関する専門知識をESGラベル債の分野にも応用し、PIMCO独自の相対バリュー・トラッカーなどのツールを活用して従来型債券と比較したESGラベル債の「グリーニアム」、割安/割高を評価しています。
ESGラベル債ユニバース内のサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)の重要性を鑑み、独自のSLBトラッカーを開発しました。このツールでは、主要業績評価指標(KPI)のテストを控える債券を定期的に評価します。ポートフォリオ・マネージャーにとって、この評価が非常に重要なのは、発行済みSLBの割合が増え、それらがサステナビリティKPIの節目に近づくと、クーポンがステップアップするきっかけになる可能性があるためです。
しかしながらESG債は、ESG関連の投資ユニバースの一部に過ぎません。ESGプロファイルが良好な多くの発行体が従来型の債券を発行し続けているためです。そのためPIMCOでは、従来型債券投資のコミュニケーションとリサーチにも引き続きバランスよく力を入れていく方針です。
債券投資家は、経済および企業の持続可能な移行においてきわめて重要な役割を果たすことができると考えています。そして、PIMCOは資本提供者と発行体とのさまざまなつながりを活かし、リサーチ、エンゲージメント(積極的な対話)を通じて、戦略を実行してまいります。将来を見据えた統合型アプローチをとり、お客様の長期的な価値を追求してまいります。
PIMCOの見方と分析、および発行体との対話のケーススタディに関する詳細は、こちらからサステナブル投資レポート(英語版のみ)をダウンロードください。また、PIMCOのサステナビリティ対応に関する詳細はこちらをご覧ください。
ご留意事項
環境(E)要因としては、気候変動、汚染、廃棄物などの問題のほか、発行体による天然資源の保護・保全の方法等が挙げられます。社会的(S)要因としては、発行体による従業員、利害関係者、顧客など個人および地域社会との関係の管理方法が挙げられます。ガバナンス(G)要因としては、リーダーシップ、報酬およびインセンティブ構造、内部統制、株式および債券保有者の権利など、発行体の運営方法が挙げられます。
サステナブル戦略とは、お客様主導のサステナブル要件を定めた戦略です。PIMCOは、これらの戦略やガイドラインと整合的なサステナビリティ原則(サステナブル要因と根本的に矛盾する発行体を除外し、独自の独立したESGスコアリングを活用して発行体を評価する)を積極的に取り入れています。さらに詳しい情報はPIMCOの「サステナブル投資方針綱領」をご覧ください。サステナビリティ戦略およびガイドラインに沿ったファンドに関する情報について、投資目的、投資戦略、サステナブル投資へのアプローチに関する詳細は、ファンドの説明資料をご覧ください。
グリーンボンドは、環境にポジティブな影響を与える、新規またや既存プロジェクトや活動の資金調達またはリファイナンスのための債券です。対象となるプロジェクトのカテゴリーには、再生可能エネルギー、エネルギー効率、クリーン輸送、グリーンビルディング、排水管理、気候変動対策などがあります。ソーシャルボンドは、特定の社会問題への対処または緩和やポジティブな社会的成果を目指す社会活動の資金調達またはリファイナンスのための債券です。社会的プロジェクトのカテゴリーには、手頃な価格の基本インフラ、必須サービスへのアクセス、手頃な価格の住宅、雇用の創出、食料安全保障、社会・経済の進歩とエンパワーメントの提供・促進があります。ソーシャルボンドとは、グリーンプロジェクトとソーシャル・プロジェクトまたは社会活動の双方への資金調達またはリファイナンスのための債券です。調達した資金の使途について、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する活動に充当されていると厳格な説明責任を果たすことができるサステナビリティ債をSDG債を呼ぶことができます。サステナビリティ・リンク・ボンドは、債券のクーポンを特定の環境・社会目標に結び付ける財務制限条項を通じて、構造的に発行体の特定のサステナビリティ目標の達成状況と連動する債券です。前述の目標または選択した主要業績評価指標(KPI)に向けて進捗している場合は利率が下がり、進捗がみられない場合は利率が上がる仕組みです。上記のグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティ・ボンドとは対照的に、サステナビリティ・リンク・ボンドは、特定のプロジェクトの資金調達のためではなく、債券の調達条件に連動する明確なサステナビリティ目標を持った企業の、一般的用途の資金を調達するものです。
社会的責任投資の投資戦略や手法の成功が保証されているわけではありません。
金融市場動向やポートフォリオ戦略に関する説明は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に相応しいという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。見通しおよび戦略は予告なしに変更される場合があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。
全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境下ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が、市場流動性の低下や価格変動性の上昇をもたらす可能性があります。債券投資では、換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。プライベート・クレジットは、流動性リスクを伴う可能性のある非公開有価証券に投資する可能性があります。プライベート・クレジットへの投資ポートフォリオにはレバレッジが利用される場合があり、投資の損失のリスクを増加させる可能性のある投機的な投資行動を伴うことがあります。CDO(Collateralised Debt Obligations)やCPPI(Constant Proportion Portfolio Insurance)、CPDO(Constant Proportion Debt Obligation)などの証券化商品は複雑な投資商品です。こうした商品には高水準のリスクを伴うことが一般的であり、そうしたリスクを把握できる高度な知識を有する機関投資家にのみ、提供されることを想定しています。デリバティブ商品を含むこれら商品を利用することにより、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。市場価値はまた、経済・金融・政治の環境(直物及び先物の金利及び為替レートを含むが限定されない)、償還、市場情勢及び発行体の信用力の影響も受けます。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。カバードボンドは、一般的に金利やクレジット・スプレッドの変動により影響を受けます。カバードボンドがカウンターパーティーのデフォルトの影響を受けない保証はありません。ローン担保証券(CLO)は高水準のリスクを伴う場合があり、かかるリスクを理解できる適格投資家への販売が想定されています。投資家は投資した資金の一部、もしくは全部を失う可能性があります。また、投資家に対してキャッシュフローが配分されない期間が生じる可能性もあります。CLOへの投資は、デフォルト・リスク、流動性リスク、マネジメント・リスク、価格変動リスク、金利リスク、クレジット・リスク等を負うことになります。ソブリン債は一般的には中央政府によって発行され、保証されています。米国政府機関の債務は米国政府からさまざまな形で支援を受けていますが、政府による全面的な保証は付与されないことが一般的です。こうした証券に投資するポートフォリオに対する保証はなく、ポートフォリオの価値は変動します。不動産及び不動産に投資するポートフォリオの価値は、災害または収用による損失、地域経済または経済全般の状況の変化、需給、金利、固定資産税率、家賃に関する規制、都市計画法また運営費などにより変動します。マネジメント・リスクとは、PIMCOが用いる投資手法およびリスク分析が望んだ結果を生まないリスク、また、政策や変更等が戦略の運用においてPIMCOが利用可能な投資手法に影響を及ぼしうるリスクを指します。
ESG投資は定性的かつ主観的な性質上、PIMCOが活用する基準やPIMCOが行使する判断が特定の投資家の見解を反映することを保証するものではありません。また、PIMCOが活用する基準は、特定の投資家が発行体のESG行動を評価する際に重要だと考える基準とは異なる可能性があります。発行体の評価にあたって、PIMCOは自発的な発表や第三者の報告から得られた情報やデータを活用しますが、これらは完全性や正確性を欠いている可能性、利用できない可能性、発行体に関して矛盾した情報やデータを提示する可能性があります。いずれの場合もPIMCOが発行体のESG行動を誤って評価する原因となります。社会的責任に関する規範は地域によって異なります。また発行体のESG行動や、発行体のESG行動に対するPIMCOの評価は時間の経過とともに変化する可能性があります。「グリーンボンド」などの特定のESGカテゴリーについて、標準化された業界の定義や認証はありません。そのため、これらの統計に有価証券を含めるにあっては、PIMCOの主観と裁量を伴います。ESG投資の投資戦略や手法の成功が保証されているわけではありません。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
本資料には、本資料作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、その見解は予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。
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