パウエル議長、FRBの政策の行方について語る:時は来た
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、23日午前のジャクソンホール会議での講演で、利下げが近いことを示唆しました。具体的には、「政策を調整する時が来た」と述べました。この2日前に公開された7月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録でも、政策緩和が近いことが同様に示唆されていました。基本シナリオでは、9月に0.25%の利下げが実施される可能性が高いとみられています。
パウエル議長は講演で、米国のインフレ率が依然、FRBの目標である2%をやや上回る「2%強」で推移する中で利下げを開始するにあたっての理論的根拠を示しましたが、それは耳慣れたものでした。つまり、ディスインフレーション、インフレ抑制の進展は十分達成されており、今後もそれが続くとFRBが確信していることを示したのです。それゆえ、米国の労働市場がより良い均衡に戻った状況で、物価の安定と雇用の最大化という二重の責務を負うFRBは、「労働市場のさらなる減速を求めたり、歓迎したりしない」としています。言い換えれば、パウエル議長率いるFRBはあくまで、高金利がインフレ率を低下させる一方、失業率の急上昇を招く景気後退は引き起こさないという、歴史的には稀な「ソフトランディング(軟着陸)」を目指していることになります。
パウエル議長は講演で、2022年にピークを迎えたパンデミック後の世界的なインフレ急騰と、その後の減速の要因について、簡潔かつバランスの取れた説明を行い、多くの時間を割きました。おそらく今回の講演は、2021年、2022年のジャクソンホールでの講演と並び、この異例で不安定な時期に金融政策を運営する当事者のリアルタイムの口述歴史第3弾として、(少なくとも将来の経済史家に)読まれることを意図しているのでしょう。
シグナルであり、具体的ではない
パウエル議長の講演では、来る緩和サイクルの終了時のFF金利の到達点や、その過程の利下げのペースについての具体的な言及はありませんでした。代わりに、FRBの声明でよく使われる文言を引用しながら示されたのは、「利下げのタイミングとペースは、今後のデータ、進化する見通し、リスクのバランス次第である」ということでした。
とはいえ、「時が来た」という発言は、FRBが9月の会合で少なくとも0.25%の利下げに踏み切ることを明確に示しているとみられます。また、「ドット・プロット」の予測を通じて、11月と12月の残り2回の年内の会合で、少なくとも2回の0.25%の追加利下げが示唆されるとPIMCOではみています。FRBは「データーポイントではなく、データに依存する」と言いたがるでしょうが、9月6日に発表される8月の雇用統計は、次回会合での利下げ幅が「0.25%か0.5%か」の議論にとって重要になるでしょう。
詳細はまだ定かではありませんが、FRBの進むべき方向は明確になったようです。
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