「反」適温経済のなかで
PIMCOの見解
- 世界経済は、成長を下押しする一方、インフレを加速させる可能性の高いショックに直面しており、多大な不確実性が見通しを曇らせています。PIMCOの基本シナリオでは、パンデミック後の経済活動再開と貯蓄の増加による需要拡大によって成長は引き続き支えられる一方、インフレは今後数ヵ月でピークに達し、その後は緩和すると予想しています。しかしながら、この見通しには明白なリスクが存在します。特にロシアとウクライナの戦争がさらに激化した場合、今後6~12ヵ月の間に景気後退が起こるリスクがあります。
- ウクライナ戦争と対ロシア制裁により、成長率とインフレ率は国や地域によって大きくばらつくことになるでしょう。ほとんどの中央銀行は、成長支援よりもインフレ抑制を優先する方針のようです。政府の財政政策による支援は、今後6~12ヵ月の間、比較的控えめなものになるとみられます。
- こうした不確実の高い環境下において、PIMCOの運用戦略ではポートフォリオの柔軟性と流動性を確保し、事態の展開に応じて機動的に好機を掴むよう努めています。デュレーションのアンダーウエイトは小幅にとどめ、カーブポジションは重視しない方針です。
- 市場の脆弱性を考慮し、リスク資産で多額のポジションを持つことは想定していませんが、デフォルトの確率が極めて低いとみられる厳選した投資対象については、機動的にスプレッド・リスクを追加する可能性があります。
- 米物価連動国債(TIPS)は価格水準が妥当であり、米国のインフレ上振れリスクに対するヘッジ手段として機能するとの見方を継続しています。ロシアの輸出品への依存度を引き下げる動きから、コモディティ価格は大幅に上昇する可能性があります。コモディティには、インフレ上振れリスクを緩和する役割を果たす可能性もあります。
- 株式市場においては、現在の環境は、信用力が高く景気循環に左右されにくい企業に有利であるとみています。PIMCOでは、株式市場に混乱が生じた際に好機を活かすべく、待機資金の確保に力を入れています。
短期経済展望
四半期に一度のPIMCOシクリカルフォーラム(短期経済予測会議)は今回もほぼバーチャルで開催されましたが、投資プロフェッショナルの意見がすぐにまとまった点が1つありました。ロシアのウクライナ侵攻、対ロシア制裁措置、コモディティ市場の乱高下は、このおぞましい戦争が始まる前から既に不透明であった経済・金融市場の見通しに、さらに多大な不確実性を上乗せするものである、という点です。
会議の冒頭では、PIMCOでかねてから繰り返し論じてきたテーマ、ナイトの不確実性と呼ばれる極端な不確実性の概念を思い出しました(例えば「キング、ケインズ、ナイト:不確実な経済についての考察」(2016年7月)をご参照ください)。リスクが経験や統計分析に基づいて確率を付与することで定量化できるのに対し、不確実性は基本的に計測不可能であり、不可知な未知数であると言えます。したがって、極端に不確実な環境においては、詳細な点予測は投資戦略の策定にはさほど役立ちません。そのためマクロの見通しについての議論は、引き続き通常より高度なものとなり、想定されるシナリオの幅の広さ、経済・金融市場における非線形かつ急激な体制変化の可能性に留意したものになっています。
多くの未知の要素はあるものの、PIMCOでは、向こう6~12ヵ月の短期経済見通しについて、現段階で投資家に最も適切だと思われる5つの主要な結論を導き出しました。現在の情勢が及ぼす長期的影響については、5月に開催されるセキュラーフォーラム(長期経済予測会議)で議論する予定です。
結論1)「反」適温経済
第1に、世界経済および政策担当者は、スタグフレーション的な供給ショック、つまり、成長を下押ししながらインフレを加速する可能性のある状況に直面しています。その波及経路は主に4つあります。1)エネルギー、食料品価格の上昇、2)サプライチェーンや貿易の混乱、3)金融状況の引き締まり、4)不確実性の高まりによる企業や消費者の信頼感低下。これらが相まって世界経済は、フォーラムのある参加者が「反」適温経済と評した状況に陥る可能性があります。つまり、インフレが「過熱」しながら、成長は「冷えこむ」状況です。
念のために言えば、PIMCOの暫定的な基本シナリオでは、先進国市場全般で引き続きトレンドを上回る成長を見込んでいます。ただし、2022年の成長率は戦争開始前の予測から約1%引き下げ、3%としました。全般的な成長は、パンデミック後の経済活動再開と貯蓄の増加に伴う需要下支え効果に引き続き支えられるとみています。
また、現物のコモディティ価格が(本稿執筆時点で)下落トレンドにある先物の動きを後追いするというテクニカルな想定に基づき、総合インフレ率並びに(食品、エネルギー価格を除外した)コア・インフレ率は、今後数ヵ月で上方修正された水準でピークを迎え、その後、徐々に緩和されると予想しています。留意点として、2022年の先進国平均のインフレ率の見通しについては、12月のフォーラム以降、2%引き上げ5%としています。しかしながら、この基本シナリオの成長率には明白かつ大幅な下振れリスクが、そしてインフレ見通しには上振れリスクがあり、特に戦争や制裁が拡大した場合にリスクが顕在化しやすくなります。PIMCOでは、米連邦準備制度理事会(FRB)の研究員が発表した地政学リスク指数が上昇している点に注目しています(図表1を参照)。言うまでもありませんが、こうした動きは、成長およびインフレのサイクルが短く、振れ幅がより大きくなるという、PIMCOの長期テーマの妥当性を裏付けています。
結論2)非線形な反応を示す可能性が高い、成長とインフレ
第2に強調しておくべき点として、成長率、インフレ率とも、初期条件が既に脆弱である上に非線形の反応が見込まれることから、見通しが一段と不透明になっている点が挙げられます。特に新型コロナの影響でサプライチェーンの混乱は既に広範に及び、多くのセクターで生産を圧迫し、コストや価格を押し上げていました。こうした新型コロナ関連の供給制約が緩和されつつあった矢先、ロシアがウクライナに侵攻し、対ロ制裁で混乱に拍車がかかっているのです。ロシアは世界貿易の1.5%を占めるに過ぎませんが、エネルギーとエネルギー以外のコモディティの分野では、はるかに大きな存在感があります。ウクライナは穀物の一大生産地であるほか、欧州の自動車産業向け部品や、ネオンなど半導体製造用の原材料の重要な供給地でもあります。グローバル・サプライチェーンは複雑なことから、特定の原材料や部品がわずかに不足しただけでも、生産量や価格に甚大な影響を与えるおそれがあります。
さらに最近、新型コロナに関連して中国の一部で実施されているロックダウンは、ロシア・ウクライナ情勢の進展を抜きにしても、グローバル・サプライチェーンに新たな供給制約を生じさせる可能性があります。仮に戦争がまもなく終結し、コモディティ価格が緩和されたとしても、「万事うまくいく」と結論づけるのは早計だとPIMCOでは考えています。また、ウクライナ戦争が終結しても、制裁は長期に及ぶ可能性が高く、貿易や資本の流れが妨げられ、サプライチェーンの問題が悪化しうる点も念頭に置いておく必要があるでしょう。
インフレの推移も非線形の反応を示す可能性があります。ウクライナ・ショック前から、多くの国でインフレ率は数十年来の高水準で推移し、長期のインフレ期待は高まっていました(米国のデータは図表2を参照)。短期的な物価上昇圧力が加わったことで、中長期的なインフレ期待が制御できず、賃金・物価スパイラルに陥るリスクが高まっています。このリスクは、労働市場が既にきわめて逼迫している米国でより高いと言えますが、インフレ・ショックの大きさを考慮すると、欧州でもリスクは高いと考えられます。多くは金融・財政政策当局の反応に左右されますが、この点については後述します。
結論3)非対称なショックで拡大するばらつき
ウクライナ戦争の第3の意味合いとして、今後6~12ヵ月の間、国や地域によって成長率やインフレ率のばらつきがさらに大きくなると考えられます。こうした動きは、PIMCOが唱えるもう1つの長期テーマ、各国間の成長率とインフレ率の乖離を増幅させるものである点にご留意ください。
欧州は最も大きな影響を受けることになるでしょう。貿易、サプライチェーン、金融面で、ロシアやウクライナと密接な関係にあること、天然ガスや石油の輸入でロシアに大きく依存していること、戦争避難民が流入していることがその理由です。欧州が年内に景気後退入りし、同時にインフレが高騰するリスクが大幅に高まっており、特にロシアからの天然ガスの供給が途絶えた場合、リスクが顕在化する可能性があります。
中国や多くのアジア諸国は、ロシアとの直接的な貿易関係は小さいものの、エネルギー価格の上昇、ロシアからの観光収入の減少、欧州の成長鈍化によってマイナスの影響を受けるとみられます。さらに中国については、紛争が激化して、ロシア側との連携姿勢を明確に打ち出した場合、二次的な制裁によって自国経済が痛手を被るリスクも無視できません。
エマージング諸国では、石油、鉄鉱石、銅、金属、小麦、トウモロコシなどのコモディティの輸出国は、交易条件の改善の恩恵を受けられると考えられます。一方で、コモディティ価格の上昇は、特にインフレ期待が十分に制御されていない多くのエマージング諸国において、既に高いインフレ圧力を一段と高める傾向があります。北アフリカや中東の一部の国は、小麦価格の上昇と観光収入の減少により、大きな打撃を受けるだろうとみています。こうした経済的苦境は、地域の政情不安を助長させかねず、食料価格の高騰が政情不安の一因となった、10年余り前のいわゆる「アラブの春」を彷彿とさせます。
一方、米国経済については、ロシア・ウクライナとの直接的な貿易関係が希薄であることや、エネルギー面で比較的自立していることから、ウクライナ戦争の直接的な影響は相対的に小さいとみられます。しかしながら、諸外国の成長減速、ガソリン価格の高騰、グローバル・サプライチェーンのさらなる混乱、開戦以降の金融状況の急激な引き締まり(図表3を参照)を背景に、米国でも年内の成長は鈍化し、インフレ率が押し上げられる可能性が高いとみています。
結論4)中央銀行:綱引き
ほとんどの中央銀行は、成長支援よりインフレ抑制を優先する方針のようです。平時であれば、中央銀行は供給側のショックに起因するインフレの影響には目を瞑ると予想するところですが、今は平時ではなく、新型コロナが長引き、サプライチェーンの混乱が続いた結果、既にインフレ率が高まっているところに、今回のショックが起きています。そのため金融政策当局は、総合インフレ率の上昇と、既に高まっているインフレ期待のさらなる上昇という、二次的な影響を防ぐことに主眼を置いているように見受けられます。言うまでもありませんが、これは先行きのハードランディングのリスクをさらに高め、今年後半から2023年にかけて景気後退リスクが高まることを示唆しています。これはPIMCOの基本シナリオではありませんが、注視すべきリスクです。
欧州中央銀行(ECB)は、成長リスクの面でロシア・ショックに最も近く、日本と並んでインフレ基調が最も弱い経済を抱えていますが、3月の会合では、現在の見通しを踏まえて、緩和策解除の方針を崩すつもりがないことを明らかにしました。
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月の会合で、FF金利のゼロ金利政策を解除し、新たな利上げサイクルを開始しました。また年内の連続利上げと、今後2回の会合のいずれかでバランスシートの縮小を開始する可能性を示唆しました(3月のFRB会合の意味合いに関するPIMCOのブログを覧ください)。
イングランド銀行は3月、3ヵ月ぶりに3度目の利上げを実施し、さらなる引き締めの可能性を示唆しました。先進国、エマージング諸国を問わず、他の多くの中央銀行も、インフレ圧力の高まりを受けて、引き締め基調にあります。大きな例外が中国で、目標を下回るインフレ率、通貨高、成長懸念から、ここ数ヵ月は緩やかな金融緩和が行われており、年内に何らかの引き締めが実施される可能性は低いとみられます。
つまり、スタグフレーションに陥った1970年代から1980年初頭以来はじめて、FRBをはじめとする欧米の主要中央銀行は、インフレ上振れのショックを伴っている状況を踏まえ、マイナス成長ショックに対して支援に乗り出す可能性が低くなっているのです。このため、先進国経済の成長が減速し、場合によっては景気が後退するリスク、金融市場が打撃をリスクが高まっています。
長期経済展望「変革への備え」で強調したとおり、PIMCOでは、継続的な長期的要因や金利上昇に対する金融市場の感応度から、中立的な実質政策金利は低水準にとどまる、との基本シナリオの見方を継続します。しかしながら、インフレ率の上昇を受けて、中央銀行は難しい選択を迫られることになります。そして中央銀行の引き締め継続が金融市場の崩壊につながった場合、アクティブ運用者にとっては投資機会となると考えています。
結論5)財政政策:弱い反応
パンデミックに対しては、各国政府は金融政策に支えられながら、あらゆる手段を総動員しました。しかし、赤字と債務が大幅に拡大し、中央銀行が量的緩和を終了して利上げに動き始めた現在、今回のショックに対する財政の反応はかなり弱くなると見込まれます。
欧州では、(効果が出るまでに時間がかかるものの)国防費の増額や、エネルギー価格高騰による可処分所得への影響緩和を目的とした移転や補助金などの形で、一段の財政緩和が実施される公算が高いとみています。しかしながら、これらの措置は、パンデミックの最中に導入された一時的な支援策の失効に伴う自動的なマイナス効果を帳消しにするわけではなく、部分的に相殺するにとどまるでしょう。また、EU予算を通じた財政統合へのさらなる一歩として、今回は防衛や再生エネルギーの投資拡大が見込まれます。ただし、これらは緩やかなプロセスであり、経済効果が出てくるのは、今後6~12ヵ月後になるでしょう。
米国では、議会がほぼ膠着状態にあることから、当面はせいぜい小幅な追加財政支援が見込めるに過ぎません。今年11月の中間選挙後、下院とおそらく上院でも共和党が優勢になるとすれば、議会と大統領の対立により今後数年、追加的な財政緩和ができない可能性があります。これは短期的な成長にとっては朗報とは言えませんが、インフレ圧力の緩和には寄与するはずです。パンデミックが示すように、インフレは金融的現象であるのみならず財政的現象であり、インフレ抑制には両輪が必要です。
投資への意味合い
このように困難で不確実な環境の中、PIMCOの運用戦略の大きな柱は、ポートフォリオの柔軟性と流動性の重視になります。リスク予算に余裕を持たせ、流動性を確保して、情勢変化に応じて好機を掴めるようにしておくことには、選択肢として大きな価値があると考えています。マクロ・リスク・ファクターを考慮して基準にかなり近い水準を維持し、現金の投入はきわめて慎重に行うべきだと言えるでしょう。
デュレーション
デュレーションについては、小幅なアンダーウエイトを目指す方針です。その理由として、現在の水準、インフレの上振れリスク、目先の成長懸念よりもインフレ抑制における信頼獲得を優先する中央銀行の引き締めの可能性が挙げられます。
しかしながら、大きなリスクポジションを取ることは想定していません。今日の成長懸念が明日には成長減速に傾く可能性があること、現在の市場に織り込まれている以上に引き締めの継続が予想され、それに対して株式市場が脆弱であることがその理由です。世界的に引き締めサイクルに入ったことから、カーブポジションは重視しない方針です。米物価連動国債(TIPS)は価格水準が妥当であり、米国のインフレ上振れリスクに対するヘッジ手段として機能するとの見方を継続しています。
クレジット市場
スプレッド資産は軒並み下落しています。PIMCOでは、ポートフォリオ内でスプレッド・リスクを機動的に増やす可能性はあると考えていますが、デフォルトの可能性が極めて低いストラクチャード商品や企業クレジット銘柄の優先的な組み入れを重視しています。ロシア・ウクライナ間の紛争激化や、インフレ圧力の高まりに対処するため主要中央銀行がタカ派的な姿勢を強める必要性から、クレジット市場は一段と弱含むリスクがあります。ポートフォリオにおけるクレジットのポジショニングでは、様々なシナリオを想定して、柔軟性、流動性、元本保全に重点を置く必要があります。
一般的な企業クレジットについては、アンダーウエイトとする方針です。第1に、企業クレジットに代わる投資先として、証券化商品市場には信用力が高く、デフォルトの確率が極めて低いとみられる分野がいくつかあるためです。例えば、米国の住宅ローン担保証券(RMBS)、資産担保証券(ABS)、商業用不動産担保証券(CMBS)などで、米国、英国、および一部の信用力の高い欧州の担保付商品を重視しています。第2に、企業クレジット・セクター内では、引き続き金融セクターのシニア債を選好します。足元の弱含みはリスクを追加する好機であり、ボラティリティが大幅に上昇した環境下でも、デフォルト・リスクが極めて低いとみられる世界の主要銀行については、慎重に規模を調整しながら、リスクを積み増す方針です。クレジット市場においては、欧州やエマージング諸国よりも米国を選好する方針を継続します。ロシア・ウクライナ紛争に対するエクスポージャーが相対的に少なく、脆弱性が低いことがその理由です。またクレジット・ベータを取る際は引き続き流動性を重視し、PIMCOのグローバル・クレジット・チームが特定した、確信度が高く、最も回復力がある現物社債に注目します。
通貨およびエマージング市場
通貨については、そのリスク・ポジションがお客様のガイドラインや期待に合致するポートフォリオにおいて、コモディティ・ベータと割安なバリュエーションに注目しつつ、厳選したG10通貨とエマージング通貨をオーバーウエイトとする方針です。現在の不確実な環境では、これらのポジションはかなり小さく抑えることになるでしょう。エマージング市場については、一般論として、エクスポージャーは限定的ですが、厳しい環境下でも魅力的な投資機会を模索していきます。
コモディティ市場
債券主体のポートフォリオ以外のアセット・アロケーションに目を向けると、最近のウクライナ侵攻が起きる前に、コモディティ市場は、需要が供給を上回り始める典型的なサイクル後期の特徴を示し始めていました。そのため、同じ価格水準であれば、生産の伸びは数年前より低くなると予想されます。他のコモディティの生産コストにとってエネルギーの重要性を踏まえれば、インフレ全般に与える影響は大きいと考えられます。こうした背景から、ウクライナ情勢は流動的であるものの、コモディティの買い手は様々な商品についてロシアの輸出への依存度の引き下げに動くとみられ、それが価格の大幅な上昇につながる可能性があります。コモディティ指数が稀に見る水準でプラスのキャリーを示す中、インフレの上振れリスクを軽減する上でも、コモディティは役割を果たしうるとみています。
株式市場
アセット・アロケーション・ポートフォリオでは、全般的な株式ベータ・リスクについて概ね中立とする方針です。現時点では、サイクル後期に入ったのは確実で、潜在成長力の勢いは依然強いものの、下振れリスクに対する脆弱性が高まっているとみています。中央銀行の引き締めは織り込み済みで、株価収益率はそれに合わせて圧縮されており、収益が今後のリターンの牽引役になるとみられます。現在の環境では、信用力が高く、景気循環に左右されにくい企業が有利であるとみています。PIMCOのアセット・アロケーション・ポートフォリオ、および債券ポートフォリオでは、株式市場で混乱が生じた際に好機を掴むべく、待機資金の確保を重視していきます。
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PIMCOの経済予測会議について
ほぼ半世紀にわたって磨かれ、様々な市場環境で実証されてきたPIMCOの投資プロセスは、長期経済予測会議と短期経済予測会議を基盤としています。年に4回、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルが集結し、世界の金融市場と経済の状況について議論、討論を重ね、投資に関して重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを特定します。
年1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界経済の構造変化やトレンドを捉えたポートフォリオを構築するため、向こう5年間の見通しに焦点を当てます。毎年セキュラー・フォーラムには、ノーベル賞受賞経済学者、政策当局者、投資家、歴史家などの著名なゲスト・スピーカーを迎え、有益で多面的な知見の提供を受けることで、議論を深めています。また、世界的に著名な経済、政治問題の専門家から構成されるPIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボードも積極的に参加しています。
年に三回開催される短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、向こう6~12カ月間の見通しに注目し、主要先進国やエマージング諸国の景気サイクルのダイナミックスを分析し、金融政策、財政政策、ならびにポートフォリオの構成に影響しうる市場リスクプレミアムや、相対価値における潜在的な変化を見定めます。
ご留意事項
全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。為替レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。政府が発行する物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。インフレ連動国債(TIPS)は、米国政府が発行する物価連動債(ILB)です。マネジメント・リスクとは、PIMCOが用いる投資手法およびリスク分析が望んだ結果を生まないリスク、また、政策や変更等が戦略の運用においてPIMCOが利用可能な投資手法に影響を及ぼしうるリスクを指します。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。
ベータは、市場の動きに対する価格感応度を示す指標です。市場ベータは1と定義されます。特定の証券や種類の証券の信用格付により、ポートフォリオ全体の安定性や安全性が保証されるわけではありません。
ここでの「割安」、「割高」という用語は、当該証券や資産クラスの長期平均並びに運用担当者の将来予想価格を大幅に下回る、あるいは上回るという意味で使われています。将来の運用成果や、証券の評価による利益の確定または損失の回避が保証されるものではありません。
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