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運用戦略

インカム戦略アップデート:高い利回り、高い信用力、グローバルな投資機会

利回りが高水準で、政策金利が引き下げに転じる中、債券投資家には魅力的な投資機会がグローバルに広がっています。

要約

  • 向こう数年にわたり魅力的なリターンを生み出す可能性を秘めているため、投資家は現在の高い利回りで固定することを検討すべきでしょう。
  • インカム戦略では、向こう6ヵ月から12ヵ月にわたり市場のボラティリティを乗り切れるだけの十分な流動性を備えた質の高い資産に価値があると考えています。
  • 近年、インカム戦略における政府系MBSのポジションは着実に増加しています。市場要因の変化に伴い、政府系MBSは長期的に魅力的な価値をもたらす可能性があります。
  • 中央銀行が政策を緩和するとの見通しを踏まえ、金利エクスポージャーについては一般に中期の満期に集中させています。

債券の利回りは高く、インフレは鈍化しており、一部の中央銀行は利下げを開始しています。債券投資家にとって、これは素晴らしいシナリオです。PIMCOインカム戦略の運用をアルフレッド・ムラタ、ジョシュア・アンダーソンとともに担当しているダニエル・アイバシンが、世界全体で景気シナリオと利下げ経路が分岐する中、利回りが高く、市場のボラティリティが高い現状を踏まえて、ポートフォリオでどのようなポジショニングを取っているのかを債券ストラテジストのエステバン・ブルバノとお話します。

問:今年の市場は、マクロ経済の動向にどのように反応しているのでしょうか。

アイバシン:多くの投資家はマクロ経済データに注目しています。中央銀行がそのデータに注目しているのですから、投資家もそうすべきでしょう。昨年12月時点では、インフレの数値が十分に緩和されていたため、中央銀行、特に米連邦準備制度理事会(FRB)は楽観的で、今年複数回の利下げが実施される可能性を示唆していました。しかし、その後、第1四半期のインフレ率と成長率が予想以上に底堅かったことから、市場参加者は、それまで金利市場に織り込まれていた利下げ予想の多くを外しました。

最近のデータは軟化し、インフレが鈍化していることを示す証拠が増えています。米国の7月の雇用統計をうけて、米国の景気後退懸念は明らかに高まりました。PIMCOでは、米国には景気後退を回避できるだけのレジリエンス(強靭性)が備わっている可能性があるとの見方を継続していますが、それが保証されているわけではありません。中国をはじめ諸外国の多くで成長が減速しており、世界的に成長、インフレ、政策決定の同調性が低下しています。

市場は最新のマクロデータに素早く、時に急激に反応する傾向があります。最近のボラティリティは、その顕著な例だと言えます。PIMCOのポートフォリオでは、ソフトランディング・シナリオで良好なパフォーマンスを発揮するだけでなく、ダウンサイド・リスクを有意に軽減できると考える質の高い資産に焦点を当てています。

問:今後6ヵ月から12ヵ月の見通しとして、インフレと景気の道筋はどうなるとみていますか。

アイバシン:インフレ率は、今年、そして来年も低下し続けるとみています。ただ、乱高下する可能性があり、かなりの不確実性も残っています。米経済は全体として底堅く推移すると予想していますが、データは引き続き主要分野での減速を示唆しています。また財政状況は懸念材料です。誰が米国大統領に選出されるのか、また同じ政党が上下両院を支配するのか、ねじれ議会になるのかによって、結果は変わるでしょう。金融政策も重要な要素です。PIMCOではFRBは9月に利下げを開始する可能性が高いとみています。

問:より長期的な視点での話に移りましょう。PIMCOは最近、長期経済展望「債券利回りの優位性」を発表しました。利回りの優位性とは何なのか、ポートフォリオにとってどのような意味を持つのか教えてください。

アイバシン:投資家としては、雑音を排除し、短期的な視点を超えてバリュエーションを評価することが重要です。この方針に従えば、債券には魅力的な価値があり、流動性と防御的な特性も兼ね備えた、グローバルに質の高い投資機会を活用する機会があると考えています。

インカム戦略にとっては、現在の投資開始利回りと今後発生するリターンの可能性を考慮すると、向こう3年から5年の将来のリターンには良い兆候だと考えています。いくつかの主要中央銀行は既に利下げを開始しており、FRBも年内に利下げを実施する可能性が非常に高いため、ここしばらくが、利回りを固定する絶好の機会だと言えるでしょう。現在、世界中の市場で見られるインカムとキャピタルゲインの機会を考慮すると、ポートフォリオで魅力的なリターンの可能性を確保するために、大規模な金利エクスポージャーを取る必要もありません。

コア・インフレ率が3%前後で鈍化しつつある現在、開始利回りが高いことの魅力を考えてみてください。そして、アクティブ運用の投資家として、こうした高い利回りを捉えることができれば、ポートフォリオは株式との対比で一段と魅力が増し、現金に対しても確実に魅力的になるのです。現金利回りは、欧州やカナダなど多くの国で、高い水準から低下し始めています。米国でも低下する可能性が高いとみています。債券投資にリスクがないわけではありませんが、潜在的な機会費用を考慮すると、現金に留まることは過去数年に比べてリスクが高くなっています。

問:インカム戦略の全体的な目標と、現在の大まかな方針について教えてください。

アイバシン:はい、インカム戦略では、投資家にとって魅力的で一貫性があり、信頼できるインカムを生み出すことを目指しています。また、パッシブ運用の代替手段と比べて大きな価値を提供することも目指しています。そうした価値の提供を長年目指してきた中で、現在は投資対象が豊富な絶好の環境だと考えています。アクティブ運用は、不確実性が高い時期に特に威力を発揮します。今日、世界的に見られる政策の変化、政治シナリオ、地政学的な不安を踏まえ、ポートフォリオの強靭性とリスク管理にも引き続き目配りしています。

PIMCOでは、インカム戦略のグローバルな投資機会をフル活用しており、強靭性の源泉、ポートフォリオ全体のボラティリティを引き下げる能力、利回りの増加を狙える能力を、財政状況が米国よりも良い諸外国に求めています。

問:ポートフォリオの金利エクスポージャーについて、地域間の相対バリューも含めて詳しく説明していただけますか。

アイバシン:ボラティリティが大きかった過去数四半期を経て、金利リスクについてはより中立的なスタンスに戻しています。全般的には運用可能な中間点近くで、パッシブ運用の代替戦略よりもややディフェンシブな傾向にあります。

また、この機会を利用して、米国以外の質の高い金利市場にポジションを分散させました。これらの国の多くでは、中央銀行の政策が経済に波及するメカニズムが、間違いなく米国よりも強力です。これは主として、30年固定金利の住宅ローンが何十年も主流になっている米国の消費者に比べて、諸外国の消費者の方が、金利の上昇(または低下)による痛み(または安堵)を、速やかに感じやすい傾向があるためです。過去数ヵ月の間に、英国と豪州の金利リスクを若干追加しました。

向こう6ヵ月から12ヵ月の中央銀行の利下げについての市場予想には概ね同意しますが、数年先を見通すと、市場の織り込みはやや保守的である可能性があります。こうした市場の織り込みに加え、米国や一部の先進国の財政状況および、関連するソブリン債に対する市場の認識に多少注意を払いながら、全般に金利エクスポージャーを中期の満期に集中させています。イールドカーブの3年から5年の部分が非常に魅力的です。

問:インカム戦略の重要な領域である証券化市場について伺います。政府系モーゲージ債(MBS)および非政府系MBSについて、どのように見ているか教えてください。

アイバシン:政府系MBSについては、いくつかのダイナミクスが作用しています。逆イールドが発生し、金利ボラティリティは高く、FRBは政府系MBSを売却しています。政府系MBS市場のもう1つの参加主体である銀行、中でも地方銀行は、資本と流動性が脆弱な状態にあるため、購入量を減らしたり、市場で売却している場合もあります。こうした作用が相まって、典型的な米政府系MBSの足元のスプレッドが、投資適格級の社債のスプレッドよりも大きくなるという、非常に興味深く、異例の状況になっています。そのためインカム戦略では、FRBが基本的に全量を買い入れていた数年前には最小限に減らしていた政府系MBSのエクスポージャーを、最近ではかなりのポジションに増やしました。

また、米政府が保証していない経年化したMBSや、非政府系MBSも重視しています。過去数ヵ月、PIMCOでは、ここ米国と欧州の両方で、銀行の売却処分を通じて魅力的な投資機会を見い出しています。

一般に、これら非政府系のモーゲージ・プールは、レバレッジ比率が非常に低い傾向になっています。現時点で居住年数が15年から20年の借り手のグループが主体で、住宅価格の上昇の恩恵を受けていると考えられます。PIMCOの基本シナリオではありませんが、こうした借り手は、経済や市場市場に大きなショックが生じても債務不履行に陥る可能性が低いため、信用リスクは比較的低いとみています。

また、世界金融危機を受けて改正された規制制度では、非政府系MBSに厳格な文書化が求められており、原投資と投資家のインセンティブを緊密に調整する一助になっています。世界金融危機時に、これらのセクターが引き起こしたあらゆる痛みは長く記憶されており、格付け機関は保守的な姿勢を継続しています。また、これらの投資の相対的な複雑さに対する見返りとして、大きな信用リスクを追加で負うことなく、構造的なリターンの上昇を拾っていくことも検討できます。非政府系MBSは、インカム戦略の主な狙い目です。

問:企業クレジットでは、現在どのようなポジションを取っているのでしょうか。

アイバシン:現在、一般的な企業クレジットの取引はかなりタイトになっていると見ています。PIMCOでは過去数四半期にエクスポージャーを引き下げ、より質が高く、流動性の高いポジションを維持しています。また、先進国とエマージング諸国のクレジットにも分散投資していますが、最近、エマージング市場のエクスポージャーの一部を小幅削減しました。これはエマージング市場を選好しないためではなく、プロファイルを全体によりディフェンシブにする動きの一環です。

ハイイールド債のスプレッドはタイトですが、ハイイールド債のファンダメンタルズは、ローンの分野とプライベート・クレジットの分野で生じた超過分の恩恵を受け、それなりに強固に見えます。ハイイールド債のポジションでは、資本構造のより上位の資産に注力しています。

問:市場とインカム戦略の見通しについて、総括をお願いします。

アイバシン:リターンを創出するには、今月見られたような予期せぬ市場のボラティリティに思慮深く対処することが、重要です。米国は今年、重要な選挙が控えています。また、今年に入り、世界各国で重要な選挙が相次いで実施され、地政学的な不確実性が高まっています。市場は引き続きマクロデータのシグナルを注視しており、ボラティリティ上昇の一因になっています。さらに、人工知能(AI)やその他の形態の技術革新による市場の創造的破壊を目の当たりにしています。

こうした環境下でのインカム戦略の方針は、信頼できる魅力的な利回りを生み出すだけでなく、ポートフォリオで十分な流動性と質の高さを備えたポジションを取り、金融市場全般が非常に興味深くなりそうな向こう数四半期に備えることです。

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