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短期経済見通し

下り坂での舵取り

世界経済の見通しが依然不透明で、株式市場がソフトランディングを織り込む中、債券は魅力的な利回りを提供するとともに、起こりうる様々なシナリオで強靭性を発揮します。

この数十年で最も急激な利上げサイクルにより、世界の経済活動は依然として先を見通すのが困難な軌道上にあります。そのため、リスクを重んじ、様々なシナリオで優れたパフォーマンスを発揮できるポートフォリオの構築を模索することが、とりわけ重要になっています。

2023年は主要国が予想外のレジリエンス(強靭性)を示しましたが、2024年の経済は停滞または緩やかな収縮に転じると予想しています。米国の際立った強さは、6カ月~12カ月の短期予測の期間中に弱まる可能性が高いでしょう。金利に敏感な市場を抱える国は、景気減速がより顕著になるとみられます。

インフレの緩和に伴い、先進国の中央銀行は利上げサイクルの終わりを迎えた可能性が高いと考えられます。これにより、最終的な利下げのタイミングとペースに関心が移っています。

歴史的には、中央銀行が景気後退に先立って利下げを実施する傾向は見られません。むしろ景気後退の状況が顕在化してから緩和に転じ、その後、市場の予想を上回るペースで利下げを実施してきました。PIMCOでは、長期的に中立的な政策金利がパンデミック前と同程度か、それをわずかに上回る水準まで低下するとの予想を継続しています。

ジェローム・パウエルFRB議長の発言と呼応しますが、インフレの上振れリスクと景気の下振れリスクは対称性を増しているとみています。しかしながら、先進国全体で需給の伸びが停滞することから、景気後退リスクは依然として高いとみています。2023年後半には多くの金融市場が上昇しました。その後、リスクの高い資産は経済のソフトランディングを織り込んでいるようで、上振れリスクも下振れリスクも過小評価している可能性があります。

バリュエーションが魅力的で、利回りが依然として15年ぶりの高水準に近い債券市場は、様々なマクロ経済シナリオを乗り切る可能性を備えた、多くの投資機会を提供するでしょう。

クレジット市場では、魅力的な利回りと下落時の強靭性を兼ね備えた米政府系モーゲージ債(MBS)など、担保付きの質の高い資産を引き続き選好しています。銀行が特定のタイプの融資から撤退する傾向は今後も続く可能性が高く、プライベート市場では資産担保型金融やスペシャリティ・ファイナンスに投資機会がもたらされると考えられます。

世界的にも非常に魅力的な投資機会があり、経済の下振れリスクが高まることで、米国債をアウトパフォームする可能性があると考えています。魅力的な利回りを踏まえ、流動性がより高い先進国市場に注力していますが、エマージング債の価値の発掘も見据えています。

現金利回りは高止まりしていますが、投資家は現金で寝かし過ぎると機会を逃す可能性があります。2023年後半の債券市場の上昇は、投資家が長期債で金利リスクを高めることなく、利回りとキャピタルゲインの組み合わせによって、質の高い中期債でより魅力的なトータルリターンを達成できることができることを浮き彫りにしました。

経済展望:2023年のレジリエンス(強靭性)から2024年は停滞へ

2023年の経済活動は、中央銀行の積極的な引き締め、銀行セクターの混乱、地政学的緊張にもかかわらず、予想以上に持ちこたえました。

これにはいくつかの要因が寄与しました。制限的な金融政策は借入コストを上昇させましたが、より広範な金融環境の引き締めにはつながりませんでした。政府の迅速な介入が、地方銀行の破綻に伴うストレスの封じ込めに寄与しました。企業の利益率は概ね健全で、消費は底堅く、世界的なサプライチェーンのボトルネックの緩和がインフレ抑制に寄与し、労働供給は回復しました。

しかしながら、今年の米国の経済成長は他の先進国と足並みを揃え、停滞ないし緩やかな縮小に転じる可能性が高いとみられます。インフレにより家計の総資産の名目価値が棄損されたことから、実質貯蓄のバッファーはまもなくパンデミック前の水準に戻る見通しです。財政政策は先進国全般で収縮的になる可能性が高く、借入コストの上昇による経済への重しが引き続きのしかかることになるでしょう。

労働参加率のさらなる改善も、実現はより難しくなりそうです。実装の遅れは、生成AI(人工知能)などの最新のテクノロジーによる生産性の向上が長期にしか見込めないことを意味します。

豪州、カナダ、ニュージーランド、スウェーデンなど、金利により敏感な変動金利型債務市場の割合が高い国は、消費の伸び鈍化を背景に、より速いペースで減速する可能性が高いでしょう。英国と欧州も、米国よりも金利に敏感な上に、脆弱であるように見えます。その理由として、欧州と中国との貿易関係の低迷、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・ショックが貿易・投資条件に与える影響の長期化、財政引き締めがやや強まるとの見通しが挙げられます。

金融政策の見通し:緩和開始までに予想されるタイムラグ

先進国の中央銀行は、それぞれの利上げサイクルの終わりに近づいた可能性が高いとみています。投資家の関心は金融緩和に向かい、最終的にいつ、どの程度の利下げが実施されるかに関心が集まっています。

歴史的に見ると、中央銀行が景気後退に先立って利下げを実施したことは殆どありません。むしろ、失業率が上昇し、需給ギャップが縮小すると同時に、つまり景気が既に後退局面に陥った時に利下げが実施される傾向があります。景気後退が起きていない中で中央銀行が利下げを実施した事例はごく僅かしかありませんが、その場合もインフレは明らかにピークを過ぎており、失業率は著しく低い水準から長期平均に向かって上昇していました。

現在、総合インフレ率とコア・インフレ率は明らかにピークを過ぎている一方(図表1を参照)、労働市場の不均衡が全般に緩和されたため、失業率はわずかに上昇に転じています。とはいえ労働市場は依然逼迫しており、賃金に敏感なコア・サービスにおけるインフレ抑制は、さほど進展していません。

図表1:インフレ指標は大幅に緩和するも、賃金に敏感なサービス分野での進展は僅か

図表1は、2つの折れ線グラフを並べたものです。左のグラフは、2018年1月から2023年11月までの先進国の総合インフレ率とコア・インフレ率の年率の変化率を示しています。右のグラフは、米国(消費者物価指数と個人消費支出)、ユーロ圏、英国の同期間のコア・サービス(住居費を除く)のインフレ率の年率の変化率を示しています。総合インフレ率は、パンデミックの最中の2020年初頭に0%近辺の低水準をつけましたが、コア指数は2020年の大半を通じて1.0%前後で推移していました。その後、両指数とも急激に上昇し、総合指数のインフレ率は2020年後半に8%超でピークに達し、コア・インフレ率も同時期に5%を超えました。その後、両指数ともに低下に転じ、総合インフレ率は約3.0%、コア・インフレ率は約4.0%にそれぞれ低下しています。住居費を除くコア・サービスのインフレ率も同様の経路をたどり、米国、ユーロ圏、英国では、2020年半ばから2021年初頭にかけて約1%かそれ以下の低水準に低下した後、約5%から8%のレンジに急上昇しました。その後、この指標は、約4%から6%のレンジに緩和されています。出所:ヘイバー・アナリティクス、2023年11月30日現在のPIMCOの試算。先進国は、ユーロ圏、英国、米国、カナダ、日本のGDP加重の合計。

出所:PIMCO、ブルームバーグ、2023年12月29日現在。英国の実質金利は、消費者物価指数(CPI)ベースで表示されるように調整。すべての金利は10年物国債。

パンデミック後の国境再開と地政学的な紛争によって拍車がかかった先進国の移民ブームも、金融政策の課題を複雑にしています。職能のミスマッチと住宅市場の供給制約によって、潜在的な労働供給の増加によるインフレ抑制効果が限られる可能性があるためです。アーサー・バーンズFRB議長下の1970年代と同様、今回はインフレ再加速への懸念から、中央銀行が緩和に転じるまでに以前より長く様子見する可能性があります。

中央銀行がどれだけ遅れるかを見通すことは、科学というよりアートであり、確立した経済分析ツールをもってしても容易ではありません。例えば、経済学者のジョン・テイラーにちなんで名づけられたテイラー・ルールや、それに関連した派生ルールは、政策金利、インフレ率、成長率の関係を測定するために広く活用されています。

単純なテイラー・ルールでは、FRBによる2022年の利上げ開始が9カ月遅れたことを示唆していました。今同じルールを適用してみると、FRBによる利下げがすでに遅れをとっていることになります(図表2を参照)。とはいえ、これらのルールは、供給ショックに直面した際の政策の処方箋には適していません。また、パンデミック関連の影響が完全に払拭された暁にインフレがどこに向かうかは定かではありません。

図表2:様々な金融政策ルールは、FRBの利上げが遅れたことを示唆

図表2の折れ線グラフは、2020年5月から2023年11月までの実質FF金利の誘導目標値をプロットしたもので、網掛けした同期間におけるテイラー型金融政策ルールによる金利の範囲と比較しています。このグラフは、FRBが2022年3月を利上げを開始するかなり前に、テイラー・ルールで示される帯域幅がFF金利を上回っていたことを示しており、FRBの利上げが後手に回ったことを示唆しています。テイラー・ルールで示される帯域は、2023年3月までFF金利を大きく上回っていましたが、2023年3月に、帯域の下限はFF金利(当時は5.0%)に収斂しました。それ以降、テイラー・ルールの帯域は、11月に5.5%を記録したFF金利を下回っており、FRBの利下げが後手に回っていることを示唆しています。出所:セントルイス連銀、ヘイバー・アナリティクス、2023年11月30日現在のPIMCOの試算。テイラー・ルールのレンジは、2023年5月12日のジェイムズ・ブラーの「金融・財政政策ミックスと中央銀行の戦略」に基づいています。

出所:セントルイス連銀、ヘイバー・アナリティクス、2023年11月30日現在のPIMCOの試算。網掛けの部分は、テイラー型金融政策ルールの範囲を示しています。テイラー・ルールの範囲は、2023年5月12日のジェイムズ・ブラーの「金融・財政政策ミックスと中央銀行の戦略」に基づいています。

全体として、先進国の中央銀行は2024年半ば近くに利下げを開始すると予想しています(FRBはもう少し早い可能性があります)。ただし日銀だけは例外で、今年も緩やかな利上げの計画を継続するとみています。

金融緩和の遅れが意味することは、中央銀行が実際に利下げを開始した暁には、市場の予想よりも積極的な利下げが行われる可能性がある、ということです。確かに、この背景には、景気後退を予測するのが難しいことや、失業率が上昇して景気後退局面に入ったと確信できるまで、中央銀行が利下げに踏み切らない傾向があることも関係しています。

その後の金融緩和のサイクルがどの程度の規模になるかについては、前回の利上げサイクルの規模が良い指標になります。

1960年代から現在までの先進国14カ国における140回の利上げサイクルの事例に基づくと、各国の中央銀行は、景気後退に陥った場合、それぞれの政策金利を平均で500ベーシスポイント(bps)引き下げる傾向がありました。景気後退と重ならなかった利下げサイクルの時でも、中央銀行は緩和開始から1年で平均200bpsの利下げを実施していました。これは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の最新の経済予測サマリーに盛り込まれた、政策会合の2回に1回のペースで25bpsの利下げをした場合に比べ2倍のスピードです。

全体として、金融緩和サイクルの規模がどうなるかについては、直前の利上げサイクルの規模が参考になります。さらにPIMCOでは、新型コロナ・ショック前の「ニュー・ニュートラル」期に似た環境に戻るとの予想を継続しており、中立的な政策金利はパンデミック前と同程度か、わずかに上回る水準になるとみています。これは、より広範な利下げ水準と合致しています。(詳細は、PIMCOの最新の長期経済展望「アフターショック経済」をご覧ください。)

ソフトランディングだけが、ありうる道筋ではない

景気後退リスクが高まっているとする論拠の1つは、中央銀行が発信している「より長期の引き締め戦略」が、歴史的に景気のソフトランディングと重なることがほとんどなかった点です。利上げサイクルが景気後退に先行しなかった1960年代半ば、1980年代半ば、1990年代の事例では、ポジティブな供給ショック(世界貿易の拡大、生産性の急上昇、OPECの増産加速)がインフレ抑制に寄与したため、中央銀行は比較的迅速に利下げに動いていました。

パンデミック後のサプライチェーンの正常化により、インフレ指標は2022年のピークから既に緩和されています。こうしたディスインフレは2024年も続き、総合指数とコア指数は先進国全般で、前年比2%~3%の範囲に低下すると予想しています。これに加え、より早いペースの利下げサイクルの可能性は、ソフトランディングの見通しを高めるものです。

しかしながら、パンデミック後の正常化によって供給サイドのさらなる改善余地は狭まっています。同時に需要も減退していることから、インフレ・リスクや景気後退リスクについて勝利宣言をするのはためらわれます。2024年は先進国全体で需給がともに伸び悩むと予想される中、景気後退リスクが依然通常よりも目立っているとPIMCOでは考えています。

インフレ・リスクが最も顕著なのは、引き続き米国です。他の先進国に比べて米国の景気は幾分、強靭性が高いように見受けられます。その要因として、以下の点が挙げられます。市場金利の上昇が既存債務の利払いに転嫁されるのが比較的遅いこと。パンデミック関連の大規模な財政出動による実質超過貯蓄が増加していること。そして、 インフラ、再生可能エネルギー、サプライチェーンへの投資支援を目的とした既存の法律による支援が拡大していることです。これは、供給サイドの恩恵がインフレ圧力を相殺する前に、短期的に需要を押し上げる可能性があります。

投資への意味合い:幅広い機会をつかむためのポジション

債券投資は、短期予測の対象期間中、概ね魅力的であると考えています。その理由として、魅力的な利回りとバリュエーションに加え、様々な経済シナリオにおいて強靭性を発揮しうると考えられる点が挙げられます。こうした強靭性は、過去2年の地政学的リスクと市場ボラティリティの高まりを受け、とりわけ重要になっています。質の高い債券に魅力的な利回りを見出せることから、投資家は信用力の劣る機会を模索する必要がありません。

歴史的にリターンとの相関性が高い投資開始時の利回りは、依然として15年来の高水準に近く、魅力的なインカムを提供すると同時に、下落時の緩衝材になります。インフレの緩和が続く中、インフレ調整後の利回りも引き続き高水準にあります(図表3を参照)。米物価連動国債(TIPS)は価格水準が妥当であり、インフレ上振れリスクが顕在化した場合にヘッジ手段として機能するとの見方を継続しています。

図表3:先進国全般の名目および実質10年金利

図表3は2つの折れ線グラフで構成されています。最初のグラフは、1990年から2023年12月までの先進国5ヵ国(米国、英国、ドイツ、カナダ、豪州)の10年物の名目金利の推移を示しています。この間、多少の変動はあるものの名目利回りは低下基調を辿り、1990年の約9%~14%から、パンデミック前後の2020年にはゼロ近辺の低水準にとどまっていました。その後、上昇に転じ、約2%から4%弱のレンジとなっています。2つ目のグラフは、同じ期間における同じ国の10年の実質金利の推移を示したものです。実質金利は、この期間の大半、全般に徐々に低下しましたが、パンデミック後に急激に上昇しました。最近は上昇ペースが鈍化しましたが、最低値より高く0.1%~1.7%のレンジにあります。出所:PIMCO、ブルームバーグ、2023年12月29日現在。

出所:PIMCO、ブルームバーグ、2023年12月29日現在。英国の実質金利は、消費者物価指数(CPI)ベースで表示されるように調整。すべての金利は10年物国債。

現金利回りは高止まりしていますが、一晩でしか固定できず、特に中央銀行が利下げを開始すれば、急速に低下する可能性があります。投資家は、市場への再参入のタイミングを計ろうとして現金を長く寝かせすぎると、機会を逃すリスクがあります。

現在、イールドカーブは通常とは異なり平坦化しているため、潜在的な価値を引き出すために、投資家はデュレーション(金利の変化に対する感応度の指標であり、長期債で最も顕著)を大幅に延長する必要はありません。中期債は、魅力的な利回りの追求や債券相場上昇時のキャピタルゲインを狙う際に役立ちます。実際、2023年後半に債券相場は上昇しました。こうした事象は景気減速時にもしばしば起こります。

対称性を増すリスク

昨年10月のPIMCO短期経済展望ピークの先にでは、グローバル債券利回りは魅力的であると同時に、短期経済予測の対象期間やそれ以降にPIMCOが予想している水準に比べても高い水準にあると論じました。米国が第3四半期の世界的な利回り上昇を牽引したことを受け、PIMCOではデュレーションのオーバーウエイトのポジションを維持し、利回りがさらに上昇すれば、ポジションの増額を見込むと述べました。

現時点でデュレーションの長期化は、魅力的かつ戦術的な取引とはみていません。直近の債券市場の上昇でグローバルの利回りがPIMCOの予想範囲に戻ったことを受け、またインフレと経済成長のリスク・バランスが変化する中で、デュレーションについては概ね中立を見込んでいます。現在、これらのリスクはより対称的になったとみています。

成長が減速した場合、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする中央銀行には積極的な利下げ余地があるとPIMCOは考えています。しかし、最近の市場における金融環境の緩和が、中央銀行の役割の大半を果たした、というシナリオも考えられます。この緩和は、消費者や企業セクターの好調持続と相まって、インフレ再燃を促す可能性すらあります。

中央銀行のコミュニケーション、金融環境、そして実体経済パフォーマンスの間のこうしたループは、今後も続くとみられます。PIMCOでは、リスク管理プロセスの一環としてシナリオプランニングを活用し、マクロ経済および市場の様々な動向を想定したポジションを取っています。

様々なシナリオに対応する投資機会

米国でも世界全体でも、財政上の懸念は続くと予想しています。昨夏の終わりに起きたように、巨額の財政赤字を穴埋めするための債券発行の増加に伴い供給増への懸念が高まる中、イールドカーブの長期部分の弱さが一段と悪化する可能性があるとみています。そのためPIMCOのポートフォリオでは、イールドカーブのスティープ化バイアスを予想しており、世界的に5年から10年の部分をオーバーウエイトに、30年の部分をアンダーウエイトとしています。

現在のバリュエーションでは、債券は株式に比べて引き続き魅力的であり(詳しくは、最新のアセットアロケーション展望プライタイムを迎えた債券投資」をご覧ください)、債券は引き続きポートフォリオに相関性と分散効果をもたらすだろうと考えています。また債券のリターンは、ポジティブな経済シナリオに左右されにくい傾向があります。

現在のバリュエーションでは、債券が引き続き魅力的であると考えます。

例えば、現在の経済状況が続いた場合、債券は現在の開始利回り水準に基づき、株式並みのリターンを得られる可能性があります。景気が後退局面に入った場合、債券は株式をアウトパフォームする可能性が高いでしょう。インフレが再燃し、中央銀行が再利上げを迫られた場合は、債券、株式とも試練にさらされる可能性がありますが、債券は開始利回りの高さがクッションになりえます。

成長およびインフレのリスク・バランスが変化する中、流動性とポートフォリオの柔軟性の重視を継続することでイベントへの対応が可能になります。アクティブ運用は、相対的価値の高い機会が浮上した際により機敏に投資機会を捉えることができます。

グローバル市場がアウトパフォームする可能性

世界の中央銀行はほぼ足並みを揃えて利上げを実施してきましたが、今後の道筋はばらつく可能性が高いとみられます。PIMCOでは、グローバル・デュレーションが米国をアウトパフォームする可能性が高いとの見方を継続しています。その根拠として、米経済が底堅く推移する可能性が相対的に高いこと、特に豪州、英国、ユーロ圏など金利により敏感な市場では下振れリスクが大きいことが挙げられます。

世界の債券市場における投資機会は、過去10年間よりも魅力的になっているとPIMCOでは考えています。広範でグローバルなプラットフォームを有する投資家は、多様な債券エクスポージャーと様々な潜在的リターンの源泉にアクセスすることが可能です。

魅力的な利回り水準を踏まえ、より流動性の高い先進国全般を重視する方針です。エマージング市場についても、現地通貨建て債券、外貨建て債券ともに有望な機会があるとみています。エマージング通貨はオーバーウエイトとし、資金調達通貨を分散させることで、高いキャリーのエマージング通貨とグローバル・リスク資産の相関性を低下させる方針です。

信用力の重視

信用力重視に傾く市場で、PIMCOのポートフォリオでは、質が高く、信用スプレッドの流動性が高い形態の米政府系モーゲージ債(MBS)を引き続き選好しています。また、信用力の高い非政府系モーゲージ債(MBS)、商業用MBS、資産担保証券(ABS)についても、現在のバリュエーションと、これらの証券の裏付けとなる担保物件のデフォルト確率が非常に低い特性に基づき選好しています。

企業クレジットにおいては、流動性の高いクレジット・インデックス、金融セクターのシニア債、投資適格債やハイイールド債の信用力の高いポジションを選好する一方、信用力の低いクレジットや変動金利のバンクローンなど景気に敏感なセクターには一層の注意を払っています。

現在、パブリック市場では魅力的な投資機会を見出せますが、これは借入環境が厳しさを増す中でローンの借り換えを余儀なくされ、見通しが微妙になっているプライベート・クレジットとは対照的です。PIMCOの最近のレポート”Opportunities in Private Credit:Stepping In as Banks Step Out."(英文のみ「プライベート・クレジットの機会:銀行が退出する中での参入」)で概観したとおり、銀行は、流動性の制約、規制上の制約、コスト構造の難題に直面して事業の縮小を進めています。

融資業界が制約を受ける中、資産担保融資において魅力的な投資機会が拡大しています。

プライベート・クレジット、商業用不動産、バンクローンなどの分野では、既存資産のストックと新たな投資機会のフローの間には重要な違いがあると考えています。既存ストックは、金利上昇と景気減速という現実的な課題に直面しており、特にファンダメンタルズが弱い領域では、プライベート資産をより現実的な市場ベースの価格水準に近づけるには、まだかなりの距離があります。

一方で、融資業界の制約が厳しくなっているため借り手は創造的な解決策を必要としていることから、柔軟性のある資本にとっては投資機会の魅力が増しています。その最たる例が資産担保融資です。銀行の事業縮小に伴って、様々な形態の消費者向け融資と非消費者向け融資に大規模な流動性ギャップが生じています。特に顕著なのが米国で、銀行は資産の売却、将来の債務負担の軽減、特定の事業分野からの完全撤退を模索しています。

体制が整っている融資プラットフォームにとっては、こうした痛みを伴う調整期間は、流動性の低い投資からの適切なプレミアムを獲得する投資機会につながる可能性があります。またPIMCOでは、プライベート市場全般で、世界金融危機以降で最高の融資機会になると予想しています。企業向けの直接融資(ダイレクト・レンディング)は活発で、2022年半ば以降のスプレッド拡大からほぼ回復しました。しかしそうした中でも、複雑な資本構造の問題に対して柔軟な解決策を求めるニーズは依然として大きく、解決策の多くは短・中期的に株式並みのリターンをもたらす可能性があるとPIMCOではみています。



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半世紀以上にわたって磨かれ、様々な市場環境で実証されてきたPIMCOの投資プロセスは、長期経済予測会議と短期経済予測会議を基盤としています。年に4回、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルが集結し、世界の金融市場と経済の状況について議論、討論を重ね、投資に関して重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを特定します。

年1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界経済の構造変化やトレンドを捉えたポートフォリオを構築するため、向こう5年間の見通しに焦点を当てます。毎年セキュラー・フォーラムには、ノーベル賞受賞経済学者、政策当局者、投資家、歴史家などの著名なゲスト・スピーカーを迎え、有益で多面的な知見の提供を受けることで、議論を深めています。また、世界的に著名な経済、政治問題の専門家から構成されるPIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボードも積極的に参加しています。

年3回開催される短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、向こう6~12ヵ月月間の見通しに注目し、主要先進国やエマージング諸国の景気サイクルのダイナミックスを分析し、金融政策、財政政策、ならびにポートフォリオの構成に影響しうる市場リスクプレミアムや、相対価値における潜在的な変化を見定めます。

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