企業が資金調達するにあたり、直接金融市場における社債と並行して、間接金融市場におけるバンクローン市場が存在します。社債の場合には、発行された債券が証券会社を通じて投資家に販売されるのに対し、バンクローン市場では、企業に対するローン債権が、組成した銀行(オリジネーター)から投資家に転売され、市場で売買されます。特にバンクローンの中でも投資適格未満の企業に対するローンは、レバレッジド・ローンと呼ばれます。
資産クラスとしてのバンクローン
レバレッジド・ローンの一般的な特徴として、満期は5年から10年程度であることが多く、①デフォルト時の弁済順位が高いこと、②有担保であること、③変動金利であること、④財務制限条項(コベナンツ)が付与されていることなどが上げられます。これらのことから、ハイイールド社債と比較して企業デフォルト時の回収率が高いことや、金利リスクが相対的に小さいことなどが上げられます。
バンクローンの一般的ストラクチャー
バンクローンでは以下のように仕組みや弁済順位によって様々な形態があります。
- リボルビング・ローン(リボルバー):事前設定された一定限度金額内で期間中いつでも貸出実行を約束する契約
- タームローンA:分割返済される中長期の貸付
- タームローンB:満期一括償還型で、タームローンAよりも優先弁済順位が低い貸付
- ファースト・リーン(第一順位抵当権付きローン):担保に対して第一位の弁済順位が付与されている貸付
- セカンド・リーン(第二順位抵当権付きローン):担保に対して第二位の弁済順位が付与されている貸付
また、プロラタ型ローンとは、リボルビング・ローンおよびタームローンAで構成されており、この2つの部分を均等に配分することから、プロラタと呼ばれています。さらに、タームローンBは伝統的に、機関投資家が好む形態であったことから、インスティテューショナル型ローンと呼ばれます。
バンクローン市場発展の歴史
1990年代の半ばごろまでは、貸出資金の出し手は主に銀行であり、借り手の信用力調査に基づいた相対での与信が主流でしたが、90年代半ば以降、ローンポートフォリオのリスク管理の観点から貸出債権の売却が信用リスクを削減する手段として活用されたことや、銀行がバランスシートを使わずに手数料収入を獲得するビジネスに力を入れ始めたことが、バンクローン市場拡大の要因となりました。さらに、2000年代半ば以降の市場拡大は、CLO(Collateralized Loan Obligation,ローン担保証券)の発達によって、バンクローンのプールをリスク・リターン特性の異なる証券に切り分けられるようになり、直接バンクローンに投資することが出来なかった投資家の資金を取り込むことが可能となったことが背景となっています。