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シリーズ3:社債

資本性有価証券とは

資本性有価証券(ハイブリッド証券) とは、社債と株式の中間的特性を備えた証券で、額 面に対して一定の利金が支払われる一方、発行体が資本不足に陥っ た際には、シニア債に先んじて損失を吸収する役割を果たす証券で す。銀行セクターでは、TLAC債、劣後債(Tier2資本証券)や優先 証券(Tier1資本証券)の市場が存在し、一括してバンクキャピタル と呼ばれています。一方、銀行以外の一般事業会社が発行したもの をコーポレート・ハイブリッドと呼びます。一般に資本性証券は発行 体がデフォルトした際に、債務の返済順位の高いシニア債と比べて大 きな損失を被るリスクが大きい分、有利な利金が設定されています。

資産クラスとしての資本性証券

証券の「資本性」とは、①調達期間に永続性があること(永久ない し超長期、および償還に関する制限がある)、②利払い・配当に関 する制限があること(任意繰延条項、強制的繰延条項)、③損失吸 収性があること(返済順位の劣後性)等の要素により定義され、そ の程度によって、資本性証券には下記のような種類があります。

  • Tier1証券 銀行が発行する優先出資証券や事業会社が資金調 達手段として発行するハイブリッド証券などが含まれます。Tier1 証券の特徴は①償還期日が設定されていない、②クーポンは繰 延可能で非累積型、③元利金の減価が可能などの点があげられ ます。
  • Tier2証券 劣後債がこのカテゴリーに該当し、①破産宣告、② 会社更生手続き、③民事再生手続きなどの事由が発生した際 に元利金の支払いが一般債務よりも劣後します。また、期限の定 まっていない永久劣後債(Upper Tier2またはUT2)と期限の 定まっている期限付き劣後債(Lower Tier2またはLT2)に分か れます。UT2の特徴としては、①償還期日が設定されておらず、株 式とTier1証券にのみ優先する、②クーポンは繰延できるが累積 型、③元利金減価が可能などの点、LT2の特徴としては、①期限付 き(期間は5年以上)、②シニア債務に対してのみ劣後する、③クー ポンの繰延や元利金の減価はできないなどの点があげられます。
  • TLAC債、総損失吸収力(TLAC、Total Loss-Absorbing Capacity)債は、大手金融機関が発行する債券で、同金融機関 が破綻時に納税者負担を伴わずに秩序だった処理を行うことが できるように、損失を吸収する条項が定められています。日米欧 などの金融当局で構成される金融安定理事会(FSB)が世界の 巨大銀行(G -SIBs)に対して求める資本規制に対応して発行さ れ、銀行持株会社や銀行本体などが損失を吸収できる規模の社 債を予め発行しておき、万一の破綻時に当該社債保有者の損失 を負担する仕組みとなっています。TLAC適格債として認められ るには預金やシニア債に先立って損失を吸収する「劣後性」の要 件を満たす必要があります。
資産クラス

資本性証券に関して、発行体から見た意義については、①株式希 薄化の回避、②資本構成の改善、③税務上のメリットなど、資本コ ストを抑制しつつ、財務の柔軟性向上を図れるという点があげられ ます。一方で、投資家の観点からは、①高スプレッドの投資対象、 ②投資判断における選択肢の多様化といったメリットがあります。 一方で、こうした両者の資本性有価証券に対するニーズの差から、 発行体と投資家の利害対立が一般のシニア債に比べてより顕著に なる傾向があることについては、注意が必要といえます。

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