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シリーズ3:社債

ハイイールド債とは

社債には、投資適格債の他にハイイールド債があり、投資適格債市 場と同様に多様なセクターによって構成されています。ハイイールド 債は投資適格債に比べ、一般的に発行体の信用力が低い一方で利 回りが高く、対国債ではスプレッドが大きいという特徴があります。 具体的には、投資適格債がAAA格からBBB格までの格付を付与さ れたものであるのに対して、ハイイールド債はBB格以下の格付を持 ちます。

1980年頃までは米国のハイイールド債市場は投資適格から格下 げされた債券(フォーリン・エンジェル)で占められていました。 現在のように、低格付の企業が発行する社債が流通し始めたの は、1980年代に入ってからのことです。初期には主にM&Aのため の資金調達に用いられましたが、1990年代には設備投資のための 起債が増え始め、2000年代には幅広いニーズに対応したグローバ ルな市場へと発展しました。現在では、米国外でも欧州のほか、ア ジアや南米などのエマージング市場でも発行されています。

ハイイールド債の発行体企業は、設立から間もない企業や、競争や 変動が激しいセクターの企業、もしくはファンダメンタルズが相対的 に不健全な企業である場合があります。また、レバレッジド・バイア ウトに際してハイイールド債が発行されることもあります。ハイイール ド債は投資適格債よりデフォルト率が高い傾向がありますが、一般 的にその高いリスクに見合った利回りを獲得できます。ハイイールド 債は、主に満期の短いものが発行され、多くは10年未満で、発行後 4-5年で発行体による期限前償還が可能なものも少なくありません。

米国ハイイールド債の市場規模の推移

資産クラスとしてのハイイールド債

ハイイールド債の価格は景気拡大局面で上昇し、後退局面では下落 する傾向があります。一般に、景気の拡大は金利の上昇(債券価格 の下落に寄与)を、景気の後退は金利の低下(債券価格の上昇に寄 与)を伴いますが、ハイイールド債のスプレッドは景気拡大期に縮小 (債券価格の上昇に寄与)し、後退期に拡大(債券価格の下落に寄 与)します。スプレッドの変化が金利の変化を打ち消し、ハイイール ド債の価格は景気の動向と同じ方向に動きやすくなります。この結 果、ハイイールド債券は国債などとは相関が低く、資産クラスとして のハイイールド債はリスク分散の観点から重要な役割を果たすと言 えるでしょう。

ハイイールド債のスプレッド変化幅は、低格付のもの(つまり、スプ レッドの絶対水準が大きいもの)ほど大きくなります。このため、BB 格などハイイールド債のなかでは上位格付の債券はより投資適格債 に近い動きをする一方で、B格やそれ以下の格付の債券はより株式 など高リスク資産に近い動きをします。投資家はその目的や市場見 通しに応じて格付配分を決定する必要があります。

ハイイールド債は、信用が収縮した局面で流動性が低下し(買い手 が少なくなり)、発行体のファンダメンタルズから乖離して価格が下 落することがあります。事実、2008年の金融危機の直後にハイイー ルド債の価格は大きく下落しました。しかし、2009年以降、流動性 への懸念が後退すると反発し、その後はリスク許容度の回復、企業 のファンダメンタルズの改善や低金利環境下で高利回り資産への需 要が高まったことなどを背景に上昇しました。

ハイイールド債の主なリスクの一つにデフォルト・リスクがあります。 ハイイールド債への投資においては損失率とスプレッド(もしくは利 回り)の相対的な水準を見ながら投資することが重要です。通常の 市場環境では、スプレッドは市場参加者の想定する損失率を織り 込んだ水準となります。しかし、スプレッドが実態と比べ過度な損 失率を織り込んだ水準に達する場合があり、そうした環境ではハイ イールド債の投資妙味が高まっていると考えられます。

米国ハイイールド債のスプレッドの推移

フォーリン・エンジェルとライジング・スター

「フォーリン・エンジェル(堕天使)」とは、かつて投資適格であっ たものの、発行体企業の経営環境の悪化から信用力が低下し、投 機的格付に格下げされた銘柄を指します。これとは逆に、「ライジン グ・スター(希望の星)」は格付の見直しにより、投機的格付から投 資適格となった銘柄を意味します。投資適格と投機的格付では、組 入れられるインデックスや、投資家層など、需給面で大きな違いが あるため、これらの銘柄は相対的に変動が大きくなります。投資に あたってはよりリスクに注意する必要がある一方で、超過収益の獲 得機会となるとも考えられます。

例として、格付けに対応する利回り及びデフォルト率の関係を観察 してみると、投資対象の格付けを落としていくに連れて利回りは比 較的緩やかに上昇する一方で、デフォルト率はB格を下回ったところ で急激に上昇する傾向があります(図表7)。よってこの関係が今後 も成立する場合、例えば投資対象をBBB格からBB格に落とすこと によって、デフォルト率の上昇は約0.2%ポイントに抑えつつ、利回り を0.9%ポイント改善させることが期待できます。

ハイイールド債券市場では、ハイイールド債として発行された債券と 投資適格から格下げされた債券が流通しています。経済環境などに より、フォーリン・エンジェルが増えるとハイイールド債市場の構成 は大きく変化します。また、ライジング・スターが増えると、ハイイール ド債市場は縮小することになります。

格付け別平均デフォルト率および最低利回り

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