キャピタル・ストラクチャー(資本構成)
図表1に示したのが企業バランスシートの負債側の構成概念図で す。一般に普通社債(Straight Bond)は融資の次に弁済順位が高 く(相対的に弁済順位が高い債券を「シニア」、低い債券を「ジュニ ア」と呼ぶことがあります)、社債の中では相対的にリスクの低いも のです。担保付の社債の場合はさらにこれより安全性が高くなると 考えられます。
普通社債よりも弁済順位が低く、資本性を有するものが劣後債 (Subordinated Bond)です。返済順位は普通株式より高い一方 で、議決権はなく、普通社債と普通株式の中間的な存在と言えま す。一般的に、返済順位の低い(劣後する)債券ほど利回りが高く、 格付も低くなります。
特殊なものとして一定の要件を満たすと属性が変化する債券も存 在します。例えば転換社債(転換社債型新株予約権付社債)は、一 定の条件により保有者の意思で株式に転換することができます。ま た、コンティンジェント・キャピタルと呼ばれる債券は事前に取り決 められた一定の条件(自己資本が一定の比率を下回る、など)が満 たされた場合に、資本に転換されたり、元本が削減されたりといっ た損失吸収機能が備わった債券です。
社債の発行体
社債の発行企業(発行体)はその業態に応じて、大きく金融、産業、 公益セクターの3つに分けることができます。金融機関によって発 行される社債を金融債(Financial)、一般企業によるものを事業債 (Industrial)と呼ぶことがあります。各セクターはさらに細分類す ることができ、例えば金融セクターは銀行や証券、保険などと分け ることで、それぞれの業態の特色を分析するのに役立ちます。
複数の連結対象企業を持つ事業体は、金融子会社を設立して資金 決済などを一元管理し、債券の発行もその金融子会社が行う場合 があります。一方、発行体の親会社が元利金の支払いを保証するこ ともあります。また、2008年の金融危機後には、金融システムの安定化策の一つとして、政府が金融機関の発行する社債について保証 を行い、資金調達を助ける事例がありました。
債務不履行
社債の満期日や利子の支払い日において、発行体が元本や利子の 支払いが不可能になる場合を「債務不履行(デフォルト)」と呼びま す。このとき、当該社債の保有者は損失を被ることとなりますが、発 行体が清算(または再生)される過程における資産の売却などによる 弁済が期待できます。一般に、デフォルト後の清算プロセスによる 弁済は「回収(リカバリー)」とよばれ、その元本に対する比率は、当 該発行体の資産の評価額や当該社債の資本構成上の弁済順位に大 きく依存します。
格付
発行体の信用力を評価する指標として、格付会社の付与する格付 を利用することが出来ます。ムーディーズ、スタンダード・アンド・プ アーズ、フィッチや、日本では格付投資情報センター(R&I)や日本 格付研究所(JCR)などによる格付が一般に用いられています。各社 が発行体の財務や事業内容などを調査し、それぞれの証券の資本 構成上の順位を加味して格付を決定します。格付の呼称は各社で 異なりますが、図表2の通り、Aaa/A A A格からデフォルト格付まで のランクがあり、それぞれのランクについて「+」「-」などのノッチが 付されることがあります。また、今後の格付の見通し(アウトルック) が「格上げ方向」「安定的」「格下げ方向」と示されることがありま す。Baa/BBB格以上の債券は投資適格債、それ未満の債券はハイ イールド債(非投資適格債券、投機的格付債券、ジャンク債)と呼 ばれます。機関投資家などが「投資適格であること」というように投資要件として格付を用いることがあります。