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短期経済展望

不確実性の中の、確かな投資機会

世界経済の見通しが不安定で、株式のバリュエーションが上昇する中、債券市場は魅力的な利回りと重要な分散化効果を提供します。

主な結論

米国の政権交代により、2025年の世界経済は不確実性が増大します。トランプ次期政権が掲げる保護主義的政策には、貿易関係を再構築し、世界経済全体の力学を変えるパワーがあります。実際の政策とその影響はまだ不透明ですが、PIMCOでは起こりうる結果について幅広く予想しています。以下では、PIMCOの短期的な経済見通しをご説明します。

  • 不確実性の中の、確かな投資機会:トランプ政権が掲げる米国の政策転換により、起こりうる成長の帰結の幅が大きくなっています。米国のインフレ・リスクと、米国以外の多くの国の景気後退リスクの両方が高まっています。PIMCOの基本シナリオでは、米国が中国や他の貿易相手国に対して、経済的に管理可能な範囲で関税を引き上げると想定しています。しかし、長期的な貿易不均衡の是正を迫る、より強制力の強い政策により、世界経済と金融市場が混乱する可能性があります。先進国全般で、インフレ率は目標水準に向けて収束を続けるとみており、これにより先進国の中央銀行は利下げを継続できると予想しています。しかしながら、関税引き上げに伴う物価水準の調整によって、特に米国で、インフレ抑制のさらなる進展が遅れる可能性があります。米経済が全般に底堅い中で、政策の不確実性が高まっているため、より漸進的でデータに基づいたアプローチが求められます。

先行きについては、より明るいアップサイドから、より暗いダウンサイドまで、現実となる可能性は両方向に高まっています。その中で米国のリスク資産は、楽観的なシナリオへの依存を強めています。米国の株価は減税と規制緩和に対する期待に支えられ、最高値を更新する一方、クレジット・スプレッドは過去最低のレベル近くまで縮小しています。この勢いが続く可能性はありますが、過去のデータから、現在のバリュエーションがさらに持続的に上昇する余地は限られているとみています。対照的に債券は、短期と長期の両方で魅力的な投資機会を提供しています。以下では、PIMCOの投資見通しをご説明します。

  • 債券が優位:債券は、2025年のポートフォリオで重要な役割を果たす態勢になっています。株式のバリュエーションとクレジット・スプレッドが魅力的ではない時に、債券の利回りは魅力的であり、質の高い債券への投資を始めるに望ましい環境です。現金とは異なり、債券は、政策金利の低下に伴いキャピタルゲインの恩恵を受けることができます。このため、ポートフォリオにおいて、株式投資との分散および安定化の手段として、その役割が高まっています。
  • 相対価値を活用:市場全体で多様な投資機会を活用することで、より広い視野を得ることができます。既に十分な投資妙味があるグローバルへの分散投資の機会は、米国の赤字拡大と分岐する世界経済の軌道により、一層拡大しています。革新的で構造的なリターンの源泉を発掘することにより、経済成長や金利に関する一方向への賭けへの依存を減らすことも可能です。

こうした背景を踏まえ、PIMCOでは米国をはじめとする先進国、特に英国と豪州、さらに一部のエマージング市場の債券の投資機会が有望だとみています。また、政府系モーゲージ債を選好するとともに、公募(パブリック)、私募(プライベート)の両市場で、他のクレジット・セクターよりも担保として実物資産で裏付けられている資産への投資(アセット・ベースド)を選好しています。

経済見通し:不確実性の中の、確かな投資機会

2024年10月のPIMCO短期経済展望ソフトランディングを見据えて」では、米経済は、他の国と同じように、景気後退に陥ることなく緩やかな成長とインフレという、珍しいソフトランディングを実現する態勢を整えているようだとお伝えしました。また、先進国経済は、2025年に目標インフレ率に戻る軌道に乗っているようだとも述べました。リスク要因としては、米国の大統領選・議会選と高水準で推移するソブリン債務を挙げていました。

こうした予想の大枠は変わっていません。世界の実質GDP成長率は、緩やかに減速すると予想しています。移民の減少と関税の引き上げは、経済が堅調であるにも関わらず、米国の成長を抑制する可能性が高いでしょう。一方、欧州経済は引き続き出遅れ、低迷しています。

中国経済の見通しは依然として不安定で、成長リスクとインフレ・リスクは下方に傾いています。その背景として、引き続き慎重な財政支援、民間部門の信用需要の低迷を招いた住宅セクターのレバレッジ解消、高い実質金利、製造業の過剰な生産能力が挙げられます。長引く不動産セクターの低迷にもかかわらず、中国は2024年に5%の成長目標を維持しました。牽引役は、特に半導体とテクノロジー分野での生産拡大、インフラ投資、輸出の伸びでした。

しかしながら、この成長モデルは、貿易をめぐる緊張の激化、消費者基盤の軟化、人口と生産性の伸びの長期的な低下の重圧により揺らいでいます。中央政府高官は、2025年の成長率の目標を4.5%前後に引き下げるとみられ、コア・インフレ率も引き続き抑制される見通しです。この予想では既に、向こう1年の消費を支えるために、約1.5兆人民元(対GDP比1%~1.5%)の景気刺激策が必要になると想定しています。

先進国のインフレ見通しが、中央銀行の目標水準に向かって徐々に収束するとの見方は変わっていません。ただ、米国の関税引き上げにより、このプロセスが遅れる可能性があります。労働市場の緩和とインフレ率の低下により、先進国の中央銀行には利下げの継続余地が生まれるはずです。地域ごとに異なりますが、先進国の中央銀行は、2025年中に0.5%~1.5%の利下げを実施するだろうとPIMCOでは予想しています。

日本銀行は引き続き例外的な存在です。通貨のボラティリティが高いものの、インフレ期待の高まりが基礎的なインフレを支えることから、PIMCOでは日銀は0.5%の利上げを行うと見ています。

リスクと起こりうる結果

米国の大統領選・議会選の結果を受けて、経済上、起こりうる結果の幅は広がっています。PIMCOの基本シナリオでは、米国は中国やその他の貿易相手国に対して、経済的に管理可能な範囲で関税を引き上げる一方、税制、歳出、貿易政策により、米国の純財政赤字は2025年から2026年にかけて6%から7%程度で変わらず、経済への影響は限定的になると想定しています。

しかし、次期トランプ政権が慢性的な貿易赤字と財政赤字に対処するため、より積極的な政策転換を進めるリスクが考えられます(図表1を参照)。政権は、この政策が長期的に米国の持続可能性と公平性を高めると主張しています。世界の貿易不均衡を有意に変化させるには、世界の貯蓄・投資パターンを変化させ、米国のGDPに占める消費の割合や、(例えば中国など)他の地域の製造業のシェアを減らす必要があります。

図表1:貿易政策不確実性指数

図表1の折れ線グラフは、1995年12月から2024年11月までの期間における米連邦準備制度理事会(FRB)の貿易政策不確実性指数の推移を示しています。指数の説明は、グラフの下の注に記載しています。この期間において、同指数は2017年1月までの20年間、25から50の間で推移していましたが、トランプ大統領の1期目が始まった月には165に急上昇しました。2017年から2021年初頭にかけては、45から265のレンジで大きく変動しました。2021年から2023年までは、バイデン政権下で50前後で安定していました。指数は2024年に再び上昇し始め、トランプ氏が2期目の大統領に選出された2024年11月には365に急上昇しました。

出所:米連邦準備制度理事会(FRB)、2024年11月30日現在。貿易政策不確実性(TPU)指数は、FRBの国際金融部門のスタッフによって組成された指数で、貿易政策の不確実性に関連するニュースへのメディアの注目度を測定します。この指数は、(ProQuest Historical Newspapers and ProQuest Newsstreamでアクセスした)ボストン・グローブ、シカゴ・トリビューン、ガーディアン、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストの主要7紙の電子アーカイブの自動テキスト検索結果を反映しています。この指数は、100がニュース記事の1%にTPUへの言及が含まれていることを示しています。TPU指数の詳細については、Dario Caldara、Matteo Iacoviello、Patrick Molligo、Andrea Prestipino、Andrea Raffoによる「The economic effects of trade policy uncertainty」、 Journal of Monetary Economics、 Elsevier,vol.109(c),2020をご参照ください。

中国や他の貿易黒字国が、暗黙の製造業補助金を削減し、消費を刺激する改革をしなければ、米国は、世界一律のユニバーサル関税や外国直接投資税などの介入主義的な貿易政策を実施し、こうした改革を迫ろうとする可能性があります。しかし、米国の資産をより割高にすることにより、世界の準備通貨としての米国の負担を分散させることは、資本コストを上昇させる可能性が高く、より大胆な財政赤字の削減がなければ、米国政府の借り入れコストを増大させる可能性があります。

長期トレンドを逆転させるための、このような野心的な短期的措置は、たとえ長期的により力強くバランスの取れた世界経済の成長を生み出すことができるとしても、経済の混乱と、短期的な為替の乱高下、米国株の下落を招く可能性が高いでしょう。したがって、トランプ次期大統領が、米国株式市場のボラティリティをどの程度許容するかは、今後の見通しにとって重要な問題です。

トランプ大統領が掲げる政策転換は、米国の経済成長に対する上振れリスクと下振れリスクの両方を増幅させています。そうした政策の正確な組み合わせ、タイミング、範囲が依然不透明であることから、なおさらです。しかし、起こりうる政策の結果、短期的に米国のインフレ・リスクを高める一方、米国以外の国、とりわけ世界貿易のエクスポージャーが高く、恒常的に米国に対して貿易黒字である国については、成長の下振れリスクが高まると考えています。

例えば、米国の財政支出の予想以上の削減、大胆な貿易措置、移民の強制送還などは、米国と世界の成長両方に短期的な下振れリスクをもたらす可能性があります。逆に、米国の更なる減税や規制緩和の拡大は、米国の成長見通しを高め、消費者や企業の信頼感やリスク資産のパフォーマンスが好転するかもしれません。より公正な世界貿易、より効率的な市場、持続可能な米国の債務軌道の実現に注力することで、米国の生活水準の向上を維持するのに役立つでしょう。生産的な労働力を拡大させるための入念な移民制度の見直し、投資を奨励する規制の合理化、米国の事業のための輸出市場の開放も、米国の企業や労働者に恩恵をもたらす可能性があります。

ごく短期的には、貿易政策の不確実性の高まりが、実際の政策の如何にかかわらず、世界の工業生産、投資、貿易の重しになることが考えられます。こうした孤立主義的で米国重視の成長政策は、米国の成長に様々なリスクをもたらしますが、通常はインフレを引き起こす可能性が高くなります。米経済が潜在成長率並みかそれに近い状態で稼働している現状では、特にそう言えるでしょう。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、こうしたリスクの変化に注目しています。12月にFRBが0.25%の利下げを実施した際、FOMC委員は予測を修正し、インフレ抑制の進展をめぐり不確実性が高まる中、2025年に予想される利下げ回数を減らしました。FRBのパウエル議長は、一部の高官はトランプ次期政権で取られる可能性のある政策を予測の修正に織り込んでいると述べました。

従来の常識では、中央銀行は、関税の影響など一時的な物価水準の調整を見通すべきだとされていますが、米国重視の成長政策を伴う関税は、より持続的なインフレ圧力をもたらす可能性があります。FRB高官は、様々なシナリオで、インフレ期待の上昇と賃金の高い伸びの波及効果を引き続き懸念しているとみられます。結果として、少なくとも最初は、以前の予想よりも小幅な利下げで対応することができました。

このように、2024年に1%の利下げが実施された後、FRBの追加利下げのタイミングは不透明になっており、2025年はより漸進的で、データ次第のアプローチが取られることになるでしょう。先物市場は、ここ数ヵ月、この不確実性を反映しています(図表2を参照)。この期間中、FRBが政策金利を1%引き下げたにもかかわらず、市場からは向こう1年で1%の追加利下げが実地されるとの見方はなくなっています。

図表2:FRBの政策をめぐる不確実性の高まりを織り込んでいる先物市場

図表2の折れ線グラフは、2024年7月から2025年1月上旬までの期間における、(FRBの政策金利である)FF金利の目標レンジの中央値と(1年先のFF金利の市場予想である)FF金利先物の推移を示したものです。この期間中、FF金利は5.4%前後で始まりましたが、2024年にはFRBが0.5%の大幅利下げを実施したことで約4.9%に低下しました。その後、FRBは、より小幅なペースで2回の追加利下げを実施し、期間末には約4.4%となっています。対照的に先物金利は、2024年7月の4.1%(この時点の1年先、つまり2025年7月の予想FF金利)の高水準から、利下げ直前の9月には2.8%にまで低下していました。その後、再び上昇に転じ、1月上旬時点で4%弱になっています。詳細については、グラフが掲載されている前の本文をご参照ください。

出所:ブルームバーグ、2025年1月7日

米国の財政赤字の長期見通しが、引き続き大きな懸念材料になるでしょう。とはいえ、再生可能エネルギー投資税額控除や2022年インフレ抑制法のその他の項目など、バイデン政権の一部の政策が撤回されることや、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の削減が実施される可能性があり、赤字が徐々に改善する可能性があります。関税の引き上げも、政府の歳入増加を通じて赤字削減につながるかもしれません。

それでも、第1期トランプ政権の法案である減税・雇用法の延長が予想される他、州税・地方税(SALT)の控除を引き上げる条項など、いくつかの追加減税が実施される見込みのため、大幅な赤字の改善は困難でしょう。政府の効率を改善し、無駄を減らすための政策を通じて、いくらかの歳出削減が見られるかもしれませんが、社会保障やメディケアプログラムの改革を含む大規模な削減には、議会の立法が必要であり、特に下院で共和党が僅差の多数派である点を考えると、可決されるのは難しいかもしれません。

投資への意味合い:債券が優位

地政学的な不確実性が高まる中、ここ数ヵ月の米国やその他の国の株式市場の強さに反映されているように、金融市場は基本シナリオとして非常にポジティブな期待を織り込んでいるようです。歴史的に高い株式バリュエーションと、米国の赤字、貿易摩擦の激化の可能性は、株式市場の上昇の持続性に疑問を投げかけています。リスクは下振れの可能性が高く、安全性の余地はほとんどないように見えます。 こうした環境は、リスクを軽減するために一部のポジションを縮小することの重要性を示しています。

債券利回りは、株式のバリュエーションやクレジット・スプレッドとの対比で、ますます魅力的になるとPIMCOは考えています。5年フォワード・リターンと高い相関性をもつ質の高い債券の投資開始利回りは、2025年1月10日時点で、ブルームバーグ米国総合指数が5.10%、グローバル総合指数(米ドル・ヘッジあり)が4.91%となっています。株価の上昇が続くためには、バリュエーションが持続的に長期トレンドを大幅に上回る必要がありますが、債券の場合、過去のトレンドを維持するだけで、投資開始利回りに沿った魅力的なリターンを生み出すことが可能です。

債券市場のリターンは、マクロ経済や市場が悪化するシナリオにおいて、キャピタルゲインによりさらに高められる可能性があります。過去のトレンドも、債券が魅力的なリスクヘッジ手段やポートフォリオの分散手段であることを裏付けています(図表3を参照)。1973年以降の債券市場と株式市場の平均を振り返ると、現在のように米国のコア債券の利回りが約5%以上で、米国株の株価収益率が30倍を超えている期間では、債券はその後の5年間のリターンが株式を上回り、ボラティリティも低くなる傾向が見られました。詳細は、12月の経済・市場コメント「現金から債券へ:パンデミック後の投資における戦略的転換」をご覧ください。

図表3:歴史的に、現在の株式バリュエーションを上回る、現在の債券利回り水準

図表3の折れ線グラフは、投資開始時の利回りが5%を超える場合のコア債券(ブルームバーグ米国総合債券指数)と、景気循環調整後の株価収益率が30を超える場合の株式(S&P500)の過去の5年リターンの平均を比較したものです。市場データは1973年まで遡ります。この期間と開始条件では、年率化した5年リターンの平均はコア債券の方が高く、(最多の例を示す)ピーク時で7%強だったのに対し、株式はピーク時で約ー1%でした。

出所:ブルームバーグのデータおよびPIMCOの計算、2024年12月31日現在。説明のみを目的としたものです。図は1973年1月からのデータを使用しています。コアとは、ブルームバーグ米国総合指数を指します。CAPEとは、S&P500の景気循環調整後の株価収益率を指します。本資料内で説明された傾向が継続する保証はありません。金融融市場の動向に関する記述は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではなく、信頼できる指標になるわけではありません。インデックスに直接投資することはできません。

金利とイールドカーブ

世界の中央銀行の緩和サイクルについて、市場が織り込んでいる到達金利(ターミナルレート)は、PIMCOの基本シナリオよりやや高いようです。米国がより大胆な貿易政策をとり、世界経済の成長を鈍化させ、コモディティ価格の重しとなった場合は、短期的に米国以外の中央銀行が利下げする可能性が大きくなります(図表4を参照)。米国では、政策の不確実性の高まりがFRBの利下げサイクルの長期化につながる可能性があるとはいえ、中期債の利回りは、PIMCOが長期のベースラインと考える0%~1%の中立実質金利と比べて魅力的に見えます。

図表4:金融政策の経験則では、追加利下げの余地

図表4の4つの折れ線グラフは、米国、英国、欧州、カナダのデータを示しています。各グラフは、2018年1月から2024年12月までの各国・地域の実質FF金利をプロットしたもので、テイラー型金融政策ルールによる予想の中央値と比較しています。4つの国・地域のすべてで、テイラー型ルールを示す線は、各中央銀行が2021年と2022年に利上げを開始するかなり前に、それぞれの政策金利を上回る水準に上昇し、各地域の政策金利のピークを上回っていました。その後、テイラー型の線は、2024年の各中央銀行の利下げ開始に先駆け、2022年と2023年から低下し始めました。追加の情報は、グラフの下の注に記載しています。

出所:ブルームバーグ、ヘイバー・アナリティクス、IMF、PIMCO。2024年12月31日現在のPIMCOの計算。PIMCOでは、テイラー・ルールを「政策金利=最大(中立実質金利+インフレ目標+a*(コア・インフレ率-インフレ目標)+b*需給ギャップ、0)」と定義しています。中立金利の推定値は6つあります。PIMCOの社内モデルから算出した2つの値と、それぞれに+/-0.5%を加えた値です。a=1.25および1.5、b=0.5および1.0と考えます。これにより、テイラー・ルールの推定値は合計で24になります。需給ギャップは、2023年まではIMFの年間世界経済見通し(WEO)の推定値を、2024年については四半期データを使用しています。上記の推定値は、これらの様々な近似解の中央値を示しています。

そのため、特に最近の利回り上昇後、金利リスクの指標となるデュレーションはオーバーウエイトを見込んでいます。

長期的には、イールカーブが緩やかにスティープ化するとの予想を継続しています。その背景として、中央銀行の政策緩和と、ソブリン債の増加が懸念される中で、最近、タームプレミアムの上昇が続いていることが挙げられます。詳細については、12月のPIMCOの視点債券自警団の考察」をご覧ください。ただ、米国では、短期的にインフレ圧力が高まり、赤字のわずかな改善が予想される中、FRBの利下げが遅れる可能性があることから、イールドカーブが短期的にフラット化することも想定しています。

こうした長期的及び短期的な見通しのバランスを取り、PIMCOでは、米国のイールドカーブの30年物の領域をアンダーウエイトとする一方、5年から10年の満期のレンジをオーバーウエイトとしています。米物価連動国債(TIPS)は価格水準が妥当であり、短期的なインフレ上振れリスクに対するヘッジ手段になるとの見方を継続しています。

クレジットの見通し

企業クレジットのスプレッドは、歴史的にみてもタイトになっています。PIMCOの基本シナリオでは、企業クレジットは引き続き好調に推移すると予想していますが、世界的なリスク・バランスを考えると、スプレッドは縮小よりも拡大に偏っているように見えます。全体として、より質の高い債券と流動性の維持を選好しています。

ストラクチャード商品、投資適格級のクレジット・デフォルト・スワップ・インデックス(CDX)、低格付け債よりも質の高い投資適格債を引き続き選好しています。信用状況が広範囲で逼迫していることから、PIMCOではグローバルな時価加重型のスプレッド配分から、資金調達がより困難な領域での質の高いスプレッド配分に、重点を移しています。米政府系モーゲージ債(MBS)は、引き続き割安で、質が高く、企業クレジットに代わる流動性の高い投資先になっています。

プライベート・クレジットでは、アセットベースド・レンディング、特に信用力の高い先進国の消費者ローンと住宅ローンに関連づけられた資産を、引き続き選好しています。また、多くの非消費者系アセット・ベースドのリスク資産にも価値を見い出しており、航空機やデータインフラなど、長期的な追い風を受けるセクターを重視しています。特にコーポレート市場において、質の低い変動金利型の債務の既存ストックについては、慎重な見方を継続しています。

社債市場の一部では、より積極的な金融エンジニアリングに向かう傾向が見られます。そのため、独立したクレジット分析を活用して、認識されている信用ファンダメンタルズと格付けに関して潜在的なギャップを特定することで、投資機会が生まれています。

グローバル市場の見解

米国のデュレーションは魅力的だと考えていますが、同時に、貿易政策、財政政策、規制政策により、アップサイドのリスクとダウンサイドのリスクは、ほぼ均等にバランスが取れているともみています。米国以外の国では、リスクのバランスは下振れ傾向にあります。こうした環境は、債券市場全般でのグローバルな分散が重要であることを示しており、特に質の高いデュレーションが有効でしょう。バリュエーションと経済リスクを鑑み、米国との対比で英国と豪州を選好しています。関税問題では、最大の混乱の多くが米国外で発生する可能性が高いことから、グローバル分散投資の重要性がさらに強まる可能性があります。

エマージングの現地通貨建て債券、外貨建て債券、為替ポジションは、米国株や企業クレジットよりもダウンサイド・リスクを織り込んでいるとみられるため、妥当なリターンを提供する可能性があるとともに、米国クレジットへの依存度を引き下げることができます。外国為替のキャリー戦略は、エマージング市場のエクスポージャーからインカムを創出する、魅力的で比較的流動性の高い手段です。通貨バスケットを慎重に管理すれば、米ドルとの過度の相関を避けることができると考えています。同時に、関税強化により米ドル高が進む可能性が高いことから、対ユーロ、カナダ・ドル、中国・人民元で米ドルのロング・ポジションを選好しています。このポジションは、基本シナリオで妥当なリターンをもたらし、貿易の悪化に対して保護機能を果たすとみています。

構造的な傾向とアクティブ運用

最もアクセスしやすい市場がますます割高になるにつれ、洗練された投資家は、より構造的な戦略を通じて価値を引き出すことができます。構造的アルファの概念には、中央銀行などの非経済的な投資家による意思決定など、市場における反復可能な構造的非効率性を特定し、こうした非効率性の分散ポートフォリオを構成することで、一方向のマクロ経済見通しへの依存を減らすことが含まれます。

構造的な非効率性の一例として、投資家が他国よりも自国への投資を快適に感じる「ホームバイアス」があります。資本市場が米国外で拡大し続ける中で、これは大きな機会だとPIMCOでは捉えています。

もう一つの例が、パッシブ型上場投資信託(ETF)の台頭です。ETFの日次データの開示義務により、流動性が低い市場領域で取引の変化を追跡できるアクティブ運用会社に、情報の優位性が生まれています。また、ETFが企業クレジットなどの主流セクターで勢いを増すにつれて、より大型の取引が可能になります。近年、分散投資型クレジット商品の合成インデックスが、原資産の債券よりも流動性が高くなり、需給要因により原資産の債券をアウトパフォームすることが多くなっているため、リターンを高める機会がさらに生まれています。

結論

有利な世界経済状況、債券の元本保全性、キャピタルゲインの可能性などから、債券は2025年のポートフォリオの重要な要素として、またリスク資産のエクスポージャーを補完する分散手段として位置づけられます。短期的なボラティリティは、アクティブ運用の債券運用会社にとって投資機会になります。また、現在の利回りや過去のバリュエーションの傾向は、現金と株式の両方と比較しても、債券の予測可能な長期リターンが魅力的であることを示唆しています。



PIMCOの経済予測会議について

PIMCOは債券アクティブ運用のグローバル・リーダーとして、パブリック、プライベート両市場に関する深い専門知識を有しています。PIMCOの投資プロセスは、長期経済予測会議と短期経済予測会議を基盤としています。年に4回、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルが集結し、世界の金融市場と経済の状況について議論、討論を重ね、投資に関して重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを特定します。広範囲にわたる議論を通じて、投資アイデアを最大限に出し合い、仮定に疑問を投げかけ、認知バイアスに反論し、包括的な洞察を生み出せるよう、行動科学を取り入れています。

年1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界経済の構造変化やトレンドを捉えたポートフォリオを構築するため、向こう5年間の見通しに焦点を当てます。毎年セキュラー・フォーラムには、ノーベル賞受賞経済学者、政策当局者、投資家、歴史家などの著名なゲスト・スピーカーを迎え、有益で多面的な知見の提供を受けることで、議論を深めています。また、世界的に著名な経済、政治問題の専門家から構成されるPIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボードも積極的に参加しています。

年3回開催されるシクリカル・フォーラムでは、向こう6~12ヵ月間の見通しに注目し、主要先進国やエマージング諸国の景気サイクルのダイナミックスを分析し、金融政策、財政政策、ならびにポートフォリオの構成に影響しうる市場リスクプレミアムや、相対価値における潜在的な変化を見定めます。

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