概要
市場において債券価格を決める要因
通常、債券は、発行されると市場での取引が可能になります。市場での取引が始まると、債券の価値は価格と利回りで決まります。市場で取引される以上、各債券には売買可能な価格が必要であることは言うまでもありません。各債券の利回りは、投資家がその債券を満期まで保有した場合に獲得できると予想される1年あたりのリターンです。したがって、利回りは債券の購入価格とクーポンによって決まります。債券には、大別すると固定利付債と変動利付債の2種類がありますが、ここでは固定利付債に対象を絞って話を進めます。
債券の価格は、常に利回りと反対方向に動きます(利回りが上昇すれば価格が下落する)。債券にとって決定的に重要なこの特性を理解するための鍵は、定期的にクーポンとして支払われる金利収入の価値が債券価格に反映されていることを認識することにあります。国債などの指標となる金利が低下すると、固定されたクーポンをもつ発行済み債券(既発債)の価値は上昇します。なぜなら、既発債は以前の金利が高かった環境下で発行されたものであり、その分クーポンも高いためです。既発債の保有者は、こうした債券に「プレミアム」を乗せて市場で売却することが可能になります。一方、金利水準が上昇すると、既発債の価値は低下します。これはこれらの債券のクーポンが相対的に見劣りするようになり、結果として「ディスカウント」で取引されるようになるためです。
債券市場価格を理解する
通常、市場では、債券価格を債券の額面価値に対する割合として表示します。たとえば、ある債券が市場で「100」で取引されている場合、その価格は額面1,000ドルあたり1,000ドルであり、この債券は「パー」で取引されていると言われます。「パー・バリュー」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは「額面価値」を意味します。パーより低い価格、例えば「99」で取引されている場合には、その価格は額面価値1,000ドルあたり990ドルであり、この債券は「ディスカウント」あるいは「アンダー・パー」で取引されていると言われます。この債券がパーより高い価格、例えば「101」で取引されるようになった場合、この債券の価格は額面1,000ドルあたり1,010ドルであり、この債券は「プレミアム」または「オーバー・パー」で取引されていると言われます。
金利が上昇すると、新規に発行される債券の金利は既発のものよりも高くなるため、既発債の価格は低下します。それゆえ、一般的には金利上昇は債券投資家にとって「悪材料」だとみなされます。一方、金利が低下すると、新たに発行される債券の金利が既発債よりも低くなるため、既発債は市場においてプレミアムで取引されるようになります。