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短期経済見通し

分岐する市場、グローバル分散投資

主要国の景気の先行きにばらつきが予想される中、グローバルな投資機会を積極的に追い求めていくことが極めて重要だとPIMCOでは考えています。

主要国の景気の経路においてばらつきが顕著になる中で、世界の投資環境は、今後数ヵ月で大きく変化しようとしています。中央銀行は、パンデミックに伴うインフレ高騰を抑えるために足並みを揃えて政策を引き締めましたが、利下げにあたっては経路のばらつきが予想されます。多くの主要先進国では景気が減速していますが、米経済は予想外に強いモメンタムを維持しており、それを支えたいくつかの要因は今後も継続する構えです。

こうした成長の原動力を背景に、向こう6ヵ月から12ヵ月の短期経済予測の対象期間中、米国のインフレ率は米連邦準備制度理事会 (FRB)の目標水準である2%を上回って推移する可能性があります。PIMCOでは、FRBが他の先進国の中央銀行と同様、年央には政策正常化に舵を切る、との予想を継続しています。しかしながら、FRBのその後の利下げ経路は、より緩慢なものになるでしょう。

米国では、依然として景気のソフトランディング(軟着陸)が実現するかもしれません。実際、株式市場やFRBの政策金利の最終到達点(ターミナルレート)は、景気後退の可能性をほぼ排除しているように見えます。とはいえ、景気後退とインフレ再燃、両方向にリスクが存在し、需給両面で起きた未曾有の世界的ショックの影響を考えると、リスクは依然大きいと考えています。

こうした不確実性の中で、債券は名目利回り、インフレ調整後の実質利回りともに魅力的であり、さらに様々な経済状況を乗り越えられる可能性を秘めています。現在の平たんなイールドカーブを踏まえると、中期債が狙い目だと考えています。現金は、利回りが一時的で、中央銀行が利下げを開始すれば利回りが低下します。一方、長期債は、増大する国家債務の穴埋めに必要な債券の供給増が圧迫要因になる可能性があります。その中間にあるのが中期ゾーンです。

米国以外の先進国地域ではインフレリスクが米国ほど顕著ではなく、景気後退リスクが大きく迫っているとの見方に基づき、米国以外の債券市場が特に魅力的だと考えています。特に選好しているのが英国、豪州、カナダです。米国の強靭性を踏まえ、ユーロや他の欧州通貨よりも米ドルを選好しています。

魅力的な利回りとリターンの可能性から、政府系モーゲージ債(MBS)など質の高い資産を引き続き選好しています。金利が高止まりする中、一般企業などの借り手と、銀行など伝統的な貸し手の双方に圧力がかかるとみています。プライベート市場では、資産担保融資やスペシャリティ・ファイナンスへの投資機会が拡大するでしょう。

今日の環境では、グローバルな分散、慎重なリスク軽減、アクティブ運用による強靭なポートフォリオの構築が何より重要です。PIMCOでは、債券と株式の伝統的な負の相関性の復活を予想しており、市場に織り込まれる景気後退リスクが再び高まれば、債券は上昇する可能性があるとみています。

経済見通し:世界経済が停滞する中、米国の例外主義は根強く残る可能性

2024年1月の 短期経済展望下り坂での舵取り」では、金融政策の引き締め効果が定着する中で、2024年の世界経済は停滞または緩やかな収縮に転じると予想しました。これまでのところ、ほぼすべての先進国で、おおむねこのシナリオ通りの展開となっていますが、例外は米国です。英国、スウェーデン、ドイツでは2四半期連続のマイナス成長となり、景気後退を示すテクニカル・リセッションに陥り、その他の地域では景気が停滞しています。一方、米経済は2023年の予想外の強さを2024年初頭も持ち越しています(図表1を参照)。

図表1:米国と他の先進国で経済成長率にばらつき

図表1

図表1の折れ線グラフは、2024年初頭までのGDPに基づく長期の経済パフォーマンスを、米国とその他の一部先進国(ユーロ圏、英国、豪州、カナダ)で比較したものです。長期的な傾向としては並行的に動いていますが、2021年頃から乖離しています。米国のGDP成長率が3%程度に回復する一方、その他先進国のGDP成長率は0%程度に低下しています。
出所:ヘイバー・アナリティクス、PIMCO、2024年3月現在。先進国市場には、ユーロ圏、英国、豪州、カナダが含まれます。

米国の経済成長はおそらくピークに達しており、年内に他の先進国並みに徐々に減速していくとみています。とはいえ、米国のレジリエンス(強靭性)をもたらした要因は、減速する米経済をもうしばらく下支えする可能性があります。PIMCOが考える5つの主な要因について説明します。

1)米国需要を押し上げる、他地域と比べて規模の大きいパンデミック関連の財政刺激策と、依然高水準な連邦財政赤字

確実に米国の貯蓄残高は、特に低・中所得層の世帯で大幅に減っており、今後6~12ヵ月間に目標を上回るであろうインフレにより目減りし続けるでしょう。これが米国の経済成長が減速すると考える理由の一つです。

一方、他の先進国の推定貯蓄残高は完全に枯渇しています。また、米国の消費者は、円滑に消費するために進んで借入れを増やす傾向が強まっています。それゆえ、短期的に米国のアウトパフォームが続く可能性があります。

2)米国より金利上昇に敏感な諸外国

他の先進国では、消費者ローンや短期及び変動金利型住宅ローン金利の負担増により、金融政策の効果が速やかに波及しています。これに対し、低金利の固定型住宅ローンを組んでいる米国の家計は、FRBの利上げの影響を受けにくく、かつ貯蓄利回りの向上の恩恵を受けています。さらに、政府移転支出に伴う貯蓄が依然高水準にあり信用への依存度が低下していることから、金融引き締めや経済全体の信用フローの減少は、成長を鈍化させる通常の効果を発揮していません。

米国の地方銀行には脆弱性がみられますが、FRBや大手銀行、外貨準備の運用主体、家計といった、質が高く低利の債券保有者の大半は、システミックな事象を引き起こすことなく、金利上昇に伴う含み損をうまく対処しています。商業用不動産(CRE)やバンクローン市場など、金利により敏感な経済領域は、引き続き潜在的な脆弱性の原因になっています。総合的にみると、米経済全体に対するこれらのリスクは管理可能だと考えています。

3)米国に比べて中国の輸入競争に脆弱な欧州と東南アジア

2022年インフレ抑制法(IRA)などの最近の米国の法制度は、特に国内生産を条件とする税控除を通じて、米国内を拠点とする産業を推進しています。また米国は、多くの国に比べて経済成長の輸出依存度が低く、一方で割安なエネルギー源を自国で有しており恩恵を受けています。加えて、中国の輸出品に対する関税を継続しています。

中国は不動産セクターが深刻な不振に陥る中、成長目標を堅持するため、製造業に対する補助金政策を活用しています。これにより生産者は、特に電気自動車や太陽光発電インフラなどの再生エネルギー投資の分野で、安価な製品を輸出できるようになっています。これが引き続き世界的なデフレの一因になる可能性が高く、その影響は地域によってばらつきを見せるでしょう(図表2を参照)。

中国はまた、中低級品の生産効率を幅広く高めようとしています。これにより、欧米サプライチェーンの分散の恩恵を受けてきた東南アジア諸国が圧力にさらされる可能性があります。中国は同時に、高級品製造を政策の最優先課題に掲げています。この点では、ユーロ圏、特にドイツが相対的に不利であるようにみえます。

図表2:外国産品の輸入価格は、米国よりも欧州で大きく下落

図表2

図表2の折れ線グラフは、2006年12月から2024年3月までの米国と欧州の製造業全体の輸入価格の前年比の変化率を比較したものです。この間、米国の輸入価格は-7%から+9%の幅で変動しました。ユーロ圏の価格変動も同様のパターンを辿っていますが、変動幅は(金融危機直後)の-15%から2022年の+26%まで、より大きくなる傾向があります。2024年3月時点の前年比の変化率は、米国がー2%に対し、ユーロ圏は-7%となっています。
出所:ヘイバーアナリティクス、PIMCO 2024年3月現在

4)人工知能(AI)技術で最先端を行き、生産性向上につながる前段階で大きな資産効果を生み出す米国企業

世界的なAIのイノベーション競争を主導する米国の地位は、活気あるスタートアップ・エコシステムや、莫大なプライベート・エクイティからの資金、そして高度な半導体製造技術に支えられています。米国の輸出規制は、不完全ながらも中国の発展を制限し続ける可能性が高いでしょう。

AIブームは、生産性向上に伴うデフレの影響が出始める前に、短期的には若干のインフレ要因になる可能性があります。堅調な株式市場と巨額の利用可能資本の資産効果により、需要が喚起されることがその理由です。AIについては、実装の遅れや規模に関する疑問は残るとしても、長期的には生産性の向上に寄与するだろうと楽観視しています。

5)米国経済成長をわずかに下支えし、諸外国には打撃となりうる政策へ傾く、米国大統領選に対するリスクバランス

11月に迫る米大統領選は、世界の地政学と貿易の転換点となり、投資環境に対するリスクを変化させるとみられます。PIMCOではこの点を引き続き注視していきます。

ドナルド・トランプ氏が次期大統領になれば、NATO(北大西洋条約機構)に圧力をかけ、より大胆な保護主義的な貿易政策を推し進めると予想されます。これは、国内の生産性や経済のダイナミズムといった点では長期的に負担となりえますが、短期的には、国内の規制緩和や一部の減税措置の延長と相まって米国の成長とインフレを支える可能性があります。

ジョー・バイデン大統領が再選した場合、2017年のトランプ減税の多くを延長し、児童税額控除を拡大するとともに、1期目に導入した米国重視の産業政策を、拡大とまではいかなくとも維持する可能性が高いと考えられます。

インフレと、ばらつきを見せるグローバル市場への示唆

米国の相対的な成長率の高さを支えているこれらの要因はまた、2024年の米国のインフレの粘着性を高める要因になりそうです。世界的にインフレが沈静化する中(図表3を参照)、米国の消費者物価指数(CPI)コア指数は、今年年末時点で3%~3.5%のレンジになると予想しています。FRBが重視する個人消費支出(PCE)インフレ率は、年末時点で2.5%~3%台になる可能性があるとみています。一方、ユーロ圏のインフレ率は平均2%~2.5%を予想しています。

図表3:速度はまちまちだが、先進国のインフレ率は低下

図表3

図表3の折れ線グラフは、2018年から2024年初頭までの米国、英国、ユーロ圏、カナダのインフレ率の前年比変化率を比較したものです。これらの国では、パンデミック後に物価が急激に上昇した後、異なる時期、異なる水準でインフレ率がピークに達し、その後も様々なペースで減速しています。米国の消費者物価指数(CPI)コア指数の上昇率は、直近で3.8%となっています。PIMCOでは2024年末の上昇率を3.0%~3.5%のレンジと予想しています。ユーロ圏の現時点のインフレ率は3.1%で、PIMCOでは2024年末のインフレ率を2.0%~2.5%のレンジと予想しています。
出所:ヘイバー・アナリティクス、PIMCO、2024年3月現在。右の点線は、PIMCOの2024年第4四半期の予測。

政策金利の引締めサイクルがピークを迎える中(図表4を参照)、先進国の中央銀行は年央の緩和サイクル開始をおおむね示唆しています(詳しくは3月のブログ「1つの利上げ、3つのヒント、1つのサプライズ利下げ」を参照)。 その後の利下げのペースは速くなり、2025年末時点の金利到達点は米国以外では低くなる可能性があるとみています。

景気後退を回避するソフトランディング(軟着陸)は、地域を問わず射程内にあるように見えますが、依然として大きな不確実性が残っています。PIMCOが1960年代から現在までの中央銀行の利上げサイクルを分析したところ、過去のソフトランディングでは、経済供給のプラスの変化、インフレ率、金利の低下が主な特徴になっていました。これらの点はいずれも2023年に勢いを増しています。

しかしながらリスクの分布を吟味した結果、パンデミックに伴う特異な混乱を受けて、インフレと景気後退のリスクはいずれも通常より高い水準にとどまると予想しています。米国では、根強いインフレリスクが最も高まっているように見えます。その他の地域では、景気後退リスクが引き続き最大の懸念事項となっています。

図表4:相対的に同調して上昇してきた先進国中央銀行の政策金利は、今後ばらつきをみせる可能性

図表4

図表4の折れ線グラフは、2018年から現在(2024年3月)までの米国(FRB)、ユーロ圏、英国、日本、カナダの中央銀行の政策金利の推移を示しています。日銀を除くすべての中央銀行は、2021年と2022年にインフレが急騰したため、パンデミックに伴いその最中に0%から(それ以下)に引き下げていた政策金利を引き上げ始めました。2023年以降、FRBは5.25%~5.5%、欧州中央銀行(ECB)は4%のピークで利上げを休止していますが、日銀は2024年3月に政策金利をゼロをわずかに上回る水準に引き上げたばかりです。
出所:ヘイバーアナリティクス、PIMCO 2024年3月現在

中央銀行が目標水準を上回るインフレをどの程度許容できるかが、重要な点になります。他の中央銀行が物価の安定のみを重視しているのに対し、FRBはインフレと雇用のトレードオフの管理を含め、より広範な二面性のある目的を担っています。そのためFRBが再利上げを検討するには、幅広い要素で米国のインフレが顕著に再加速する必要があると考えられますが、当局はできれば利上げを行いたくない旨を示唆しています。

労働市場が驚くべき強靭性を見せているにもかかわらず、FRBの政策に関するリスクバランスがより利下げに傾く可能性を示唆しているのです。そうなれば、目標をやや上回るインフレ率が、しばらく続くことになります。FRBが目標をやや上回るインフレ率をどの程度許容するかが、引き続き見通しを左右する重要な問題になります。

投資への意味合い:グローバルな投資機会の模索

債券投資の見通しは引き続き魅力的です。名目および実質(インフレ調整後)利回り水準が上昇していること、債券は様々な経済シナリオで強靭性を発揮することがその理由です。PIMCOでは、景気リスクは米国では上方に、その他の先進国では下方に傾いているとの見方から、米国以外の債券市場を通常より重視しています。

現在、短期債と長期債の利回りには、ほとんど差がありません。この異例に平たんなイールドカーブは、一般的に満期の延長時の金利変化に対する感応度を示す尺度であるデュレーションを、大幅に延ばすことなく投資価値を見い出せることを意味します。

予想される政策金利の最終到達点と中立金利の標準的な推計値を比較すると、米国でも諸外国でも、短期債は今後数年間の景気後退リスクを比較的低めに織り込んでいます(図表5を参照)。

図表5:先進国の政策金利の最終到達点がほぼゼロになる予想を織り込んでいない、金利フォワード

図表5

図表5の折れ線グラフは2029年初頭までの米国、ユーロ圏、英国、日本、豪州、カナダの現時点(2024年3月)の短期金利のフォワードレートを、政策金利の最終到達点(ターミナルレート)の近似値として示したものです。市場は、日本を除くすべての国において、少なくとも2026年までは短期金利のフォワードレートが徐々に低下し、その後は横ばいで安定すると織り込んでいます。米国のフォワード金利は、2029年で約3.6%、ユーロ圏約2.2%と織り込まれています。日本のフォワード市場は、短期金利が現在の0%をわずかに上回る水準から緩やかに上昇を続けることを示唆しています。
出所:ブルームバーグ、2024年3月現在。

PIMCOでは、債券と株式の負の相関関係という、より正常なパターンが再び顕著になると予想しており、景気後退リスクが再度織り込まれた暁には、債券がアウトパフォームする可能性があると考えています。例えばFRBのジェローム・パウエル議長は3月、インフレ率がFRBの水準を依然上回っていたとしても、失業率が上昇した場合は利下げに踏み切る用意があると述べており、リスク資産には厳しい景気下振れシナリオでも、債券を下支えする可能性があります。

中期債は利回りが魅力的なうえに、相場が上昇した場合、キャピタルゲインが得られる可能性があります。また、中央銀行が現在の高水準から金利を引き下げた場合、現金利回りの低下が見込まれる点でも、中期債は魅力的に見えます。

デュレーション、イールドカーブ

デュレーションとイールドカーブに関するPIMCOの見方については、これまで投資方針がどう変化してきたかを振り返るとよくわかります。昨年10月、米国債10年物の利回りが5%に向けて上昇した際には、デュレーションは魅力的で、利回りは予想よりも高いと述べました。その後、12月には、FRBのコミュニケーションの変化を受けて、短期金利市場で、PIMCOの予想を上回る大幅な緩和が一時的に織り込まれました。

現時点で米国債10年物の利回りは4.25%前後で推移しており(図表6を参照)、デュレーションについては概ね中立とする方針を継続しています。また短期債の利回りは概ね妥当であり、PIMCOの短期経済展望の基本シナリオの予想に沿っているとみています。

図表6:スワップレートに基づく10年物国債の利回りの比較

図表6

図表6の折れ線グラフは、2011年から2024年3月までの米国、ユーロ圏、英国、日本、豪州、カナダの10年物国債のスワップレートを比較したものです。 これらの金利はすべて、2020年のパンデミックの初期に1%を下回り(日本ではマイナス)ました。その後は上昇していますが、程度とボラティリティは様々です。 3月時点で、米国のスワップレートは約3.9%、ユーロ圏は約2.5%、日本は約0.9%となっています。
出所:ブルームバーグ、PIMCO、2024年3月現在。

最近の市場の上昇を反映して、米国およびグローバルのコア債券ポートフォリオのデュレーションは小幅アンダーウエイトを継続しますが、グローバルな相対価値とイールドカーブのポジショニングに関連する戦略に引き続き注力しています。米国のイールドカーブの長期部分については、財政政策と米国債の供給に対する懸念からアンダーウエイトしています。

米物価連動国債(TIPS)は価格水準が妥当であり、米国のインフレ上振れシナリオに対するヘッジ手段として機能すると考えています。

地域によるばらつき

米国の債券市場には依然として魅力的な領域が数多くありますが、現時点では、貴重なグローバルの分散先として、豪州、英国、カナダなど、米国以外の先進国を選好しています。

豪州では、中央銀行が政策の引き締めバイアスを解除しました。しかし、特に豪州の家計部門の負債比率の高さと、住宅ローンが金融政策の変更の影響を受けやすい変動金利型である点を考慮すると、フォワードカーブに織り込まれた利下げの経路は、他の市場に比べて比較的緩やかだと見受けられます。

英国のデュレーションは魅力的だと考えています。その理由として、現在のバリュエーション、インフレ状況の改善、現時点で市場に織り込まれている以上にイングランド銀行が利下げを実施する可能性が挙げられます。同様にカナダでは、インフレ見通しの改善を理由に、リスクバランスは、現在市場に織り込まれている以上の利下げに傾いているとみています。

欧州市場の魅力はやや劣りますが、市場の厚みや資産の売買のしやすさといった流動性や分散などの重要なメリットがあります。また、米国の景気上振れリスクや欧州の下振れリスクが顕在化した場合には、堅調な展開になる可能性があります。

PIMCOの基本シナリオでは、ユーロ圏における欧州中央銀行(ECB)と10年債利回り水準に対する予想は、米国との対比でほぼ妥当だとみています。ただし、リスクバランスは、景気のさらなる軟化とECBによる一段の緩和方向に傾いているでしょう。通貨については、ユーロやスイスフラン、スウェーデンクローナなどの欧州通貨よりも米ドルを選好しており、米経済のさらなる例外主義を予想しています。

日銀の政策引き締めを受け、「世界的なばらつき」というテーマに沿って、日本のデュレーションを小幅アンダーウエイトしています(詳細は、3月のブログ「日銀の政策転換、投資家にとって新たな時代の幕開け」をご覧ください)。

エマージング債は、世界経済と金融政策状況が下支えとなる中、キャリーと分散の魅力的な供給源となります。とはいえ現時点では、先進国と比較した場合、エマージング債は現地通貨建て、外貨建てともに相対的に投資価値が低いとみています。現時点で、エマージング市場の見通しを活かす最適な手段は、通貨エクスポージャーであると考えています。

信用力を重視

その他の投資領域では、引き続き米政府系モーゲージ債(MBS)が非常に魅力的だとみています。より広く見た場合、信用力の高い非政府系MBS、商業用不動産ローン担保証券(CMBS)、資産担保証券(ABS)を引き続き選好しています。

クレジット・デリバティブ・インデックス、信用力の高い金融債および一般事業債、厳選したハイイールド債をオーバーウエイトする方針です。アクティブ運用と独立したクレジット分析は、今日の経済環境において、企業やセクターの勝者と敗者を見極めるのに役立ちます。

信用力の高いクレジットで確保できる利回りを踏まえると、景気に敏感で下振れリスクが顕在化した場合に脆弱で、信用力が低く流動性に乏しい企業クレジットのポジションには引き続き注意が必要です。

プライベート・クレジット市場では、質の高い資産担保融資を引き続き選好しています。金利が高止まりし規制環境が複雑な中、銀行の撤退が引き続き投資テーマになると考えられるためです。PIMCOでは、様々な形態の住宅ローン、消費者ローン、航空機ファイナンスを選好しています。また、稼働資産担保のクレジットから成る分散ポートフォリオの処分を模索している銀行との提携機会の拡大を目指しています。

プライベート・クレジットの既存ストックにおける課題は、柔軟性のある資本にとっては好機を生み出します。特に変動金利型の不動産市場や社債市場がそうで、高止まる金利は負債比率の高い一部の借り手の負担になります。PIMCOでは、機動的に資本を投入するにふさわしい魅力的な環境を予想しており、債券に似た特性と、株式に似た価格上昇の可能性を持つハイブリット投資に重点を置いています。

つまるところ、PIMCOでは、こうしたばらつきを見せる経済環境に対応すべく、慎重ながらも機動的なアプローチを通じて、質と価値を重視しながらグローバルに分散投資をする戦略をとっています。



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PIMCOの経済予測会議について

半世紀以上にわたって磨かれ、様々な市場環境で実証されてきたPIMCOの投資プロセスは、長期経済予測会議と短期経済予測会議を基盤としています。年に4回、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルが集結し、世界の金融市場と経済の状況について議論、討論を重ね、投資に関して重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを特定します。

年1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界経済の構造変化やトレンドを捉えたポートフォリオを構築するため、向こう5年間の見通しに焦点を当てます。毎年セキュラー・フォーラムには、ノーベル賞受賞経済学者、政策当局者、投資家、歴史家などの著名なゲスト・スピーカーを迎え、有益で多面的な知見の提供を受けることで、議論を深めています。また、世界的に著名な経済、政治問題の専門家から構成されるPIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボードも積極的に参加しています。

年3回開催される短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、向こう6~12ヵ月月間の見通しに注目し、主要先進国やエマージング諸国の景気サイクルのダイナミックスを分析し、金融政策、財政政策、ならびにポートフォリオの構成に影響しうる市場リスクプレミアムや、相対価値における潜在的な変化を見定めます。

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